第3章 里帰り
結局、どこを探しても見つからなかった・・・。
思い当たる場所はすべて探した・・・。
汚さないように袋をかぶせいつも、懐か首に下げていたため、袋の方が痛み、汚れていた。
誰かが、捨ててもおかしくはない・・・。
「ははさま・・・・。」
大好きなははさまは手紙を送ることは決してない。
アルスの王城に行儀見習いをしていた時も、故郷を旅立つ時も、この国に来た時も・・・・・。
『決心が鈍らないように』と
そんな優しくも厳しいははさまが唯一、この国に来た初めての日手紙を届けてくれた。とても嬉しかった。
あのサシェが優しい母の温もりを思い起こせる唯一の品だったのに・・・・
涙があふれてくる、嗚咽がこぼれるのを両手で押さえ蹲る。
そうして朝が来るのを必死で待った。
翌朝、今日がセレモニー最終日。失敗は許されないし、今日は休むわけにはいかない。気持ちを切り替えるように手袋とスカーフを纏えば気が引き締まった。
部屋に立てかけられた鏡の前に立つ。少しだけ眼元が晴れているがいつもの自分だ。片側の髪が少しだけ跳ねている。
『クスクス・・・しょうがないわねぇ』
ほんの少し前までははさまがそう言って僕の髪を優しく撫でつけ跳ねたところを直してくれていた。
その姿を思い出すように自分の髪を撫でつける。
「いってきます。」返事はない・・・それがいつも、無性にさみしい。
昨日とは打って変わり、ルプスは業務を完璧に行っていた。一昨日何があったのかは今だ解らないが一先ず安心した。
「はぁ~、随分賑ってるなー。」「おや、ソルではありませんか」「珍しいねぇ王城に来るなんて・・・。」
「仕方ないんだよ。子供達が「連れてけ」ってうるさいし、言質取られたし」「げんち??」
「いや、こっちの話・・・。ゼノ国王は??」
ウィスタリア国王はすでに会場に来ていて、客人たちにあいさつ回りをしている。傍には噂に名高い新しい執事がいる。
「例年通りすこし遅れてくるそうです。」「まぁ、主催者とはいえ客人だしね。」「あの子に会わせた時どんな反応をするか楽しみだよ」
雑談をしていると、靴音が響く・・・。
毅然として一歩踏み出すごとにこちらが恐縮してしまうような威厳に満ちた・・・。
もう一人の主催者が来た。