第3章 里帰り
儀式は滞ることなく終わった。今愛しい妻の前には3つのリースが飾られていた。
一つは、俺が選んだ紫と一輪だけ青い薔薇が飾られた星空の様な小さな花が細かく飾られたリース
もう一つはウィスタリア国王となったルイの選んだハート形の『繁栄』という名を持つ白バラが飾られた清楚なリース
最後の一つは真夜中に王城に飾られていた明るい色が主体の王城に飾るにはいささか素朴なリース。
明るい色合いの黄薔薇を使ったリースが妻はいちばん好みそうだ。
妻に捧げた後、彼女の国民たちに今一度宣言した。
多くの拍手が飛び交う中、あの幼い子供の姿はなかった・・・。
自分は何故、あの少年の事を気にかけているのだろう?
あの夜に出会ったから?仕草が妻のと重なったから?
あの夜子供が去った後も恋しい人が引き合わせたかのような錯覚にすら襲われる・・・。
「ゼノ様いかがなされました?」
側近であるアルバートとユーリが声をかけてきた。
「いや、今年は見に来る子供の数が多いものだと思ってな・・・・」
官僚どもの言葉を不愉快だと罵っても、国を預かる者として世継ぎは必要だ・・・。頭では理解している・・・・しかし、あの人以外を愛すること等出来ない。
「そうですね。俺たちも昼間薔薇園で子供を見かけました。」「探し物をしていたみたいで・・・プクク、アルはおじさんって呼ばれてたね」「なっ!?ユーリ貴様!!!」
子供にしてみれば俺たちは確かにいい年だろう・・・。
「それで、その子供の探し物とやらは見つかったのか?」
「いえ、見つかりませんでした。そもそもその少年が何を落としたのかすら教えてもらえず。」
「アルおじさんが余計なこと言ったのか、俺が何か失言したのかはわからないけど、わかったのはルプスという名前だけで・・・・」
「ルプス・・・・?」
ふと微かな花のにおいを感じ懐に手を入れる。縫い目がそろった小さな袋の中取り出すと丁寧に作られたサシェ・・・表面にはとても丁寧な字でメッセージが書かれていた。
『私の大切で愛するルプスへ伝えきれない愛をこめて』
送り主が持ち主に対する深い愛情が伝わってきた。