第3章 里帰り
見上げた先には見慣れない男二人、闇夜に紛れる鴉の様に黒い礼服は、シュタインの騎士達の制服。片側に掛けられた銀の鎖は国王の側近の証だとレオ様から聞いた覚えがある。
優しく声を掛けてくれたのは少し背の低めの優しい面差しの男性だった村の兄様の様に優しげで少しだけ意地悪そうに金茶色の瞳を和ませている。赤みがかった金色の珍しい髪はまるで太陽に照らされたコスモスの様にキラキラと輝いていてとても綺麗だった。
もう一方はとても背の高い厳つい顔のおじさんだった。まるで家庭教師の様に目を細め、仕切りに眼鏡の縁に指を添える姿が几帳面さを際立たせていた。そして何故か二人は僕の顔を見て目を見開いていた。
「どうして泣いてるの?道に迷ったのかな」「見知らぬ場所で一人で歩かせるとは、どういう教育をしているのだ。」
子供に言い聞かせる様な言動と不愉快とでも言いたげな言葉にムッとして
「道に迷ったわけじゃ無い!!」「では、何故子供がこんな場所に一人でいるんだ?親は何処にいる」子供ならば親と一緒にいて当然とでも言いたげな口調。
「・・・・・。」俺だって本当なら一緒にいたい。いっぱい甘えて抱きしめて貰いたい。でも、こっちにも事情があるのだ。何も知らない人間にどうしてそんな事言わなきゃいけない。
「道に迷ったわけじゃないんだ。じゃあどうして泣いてたの?」
目線を合わせて、再び聞いてくる兄様に警戒心が緩みそうになるも「・・・・泣いてない」痩せ我慢のつもりでそう言うと面白そうに笑い「涙流しながら言っても説得力ないよ。」「・・・・捜し物」聞こえるかどうか怪しい小さな声でそう呟くと声を出したのは意外にもおじさんの方だった。
「何を落とした?形状は?いつ落とした?何処を探した?」「アル!いきなり聞かないの」「・・・一人で捜す。ほっといて。」
最後の矜持だった。自分で落としたのだ人に頼ってはいけない。
しかし、「泣くほどに大切なものなのだろう?」呆れた様に言われた。大切なものだ。小さく頷くと
「なら、手伝わせてよ。一人より皆で探した方がきっと見つかる。そう言いたかったんでしょ?アルは??」アルと呼ばれたおじさんは目をそらす心なしか顔が赤い。「いいの?大したものじゃないよ」「お前にとっては大切な物だろう?」「ありがとう!おじさん。」数秒後兄様が笑い転げた。見ようやく心にゆとりが出来た。