第3章 里帰り
「へぇ、随分様変わりしたなぁ〜。この間来た時なんて冬みたいに殆ど枯れてて見る影なかったのに」「ウィスタリアの騎士の話では、廊下に飾られているドライフラワーも例の執事が作ったものらしいな。」この城に来て、やる事は殆どない上、珍しく主人であるゼノが朝から何か考え事をしていた為、側近二人は部屋を離れこうして城の中を見回っていた。
そして見かけたのがプリンセスがいた頃にはなかった壁に吊るされた色鮮やかな花達。一度乾かして色をつけられたその花達はとても色鮮やかで美しく、遠い国の技法だった。物珍しくて元同僚に聞くと噂の国王専属執事の作品らしい。あの後結局紹介してもらえず今日になり、今日こそは会えるかと思いジルに会いにいったが、今日は業務事態を休ませた。と言われて門前払い。
目的がなくなり、城を散策する事にしてこうして廊下を歩いていた。
「本当、気になるなぁ〜、ねぇ今度シュタインでもこのドライフラワー作ってみようよ。って、アルには無理かこういうの苦手だもんねー」「そんなくだらない事ではなく、もっと有益な事をしろ。それにそれは本来はメイド達の仕事だ!」
「冗談だよ。アルは冗談が通じないなぁ。でも、こんな綺麗な花が廊下に飾られてたらステラ様きっと喜ぶだろうな」かつて、自分が仕えていたプリンセスを思い浮かべる。陽だまりの様な笑顔を浮かべて愛しい人に微笑む様が簡単に思い浮かぶ。
ふと、啜り哭く声が耳に届く。幼い子供の声だ。
セレモニー中は一般の人も入って来られる。ここは城の中でも奥で少し外れた所にある。道に迷ってしまったのだろう。
アルも声が聞こえたらしく微かに頷く
「アルってば優しい。」「セレモニーの間余計な騒ぎを起こしたくないだけだ、勘違いするな」少し赤く頬を染めて声のする方に向かう。
声を頼りに薔薇園に入るが人影は見えない。気の所為だったのか?
そう思っていたが小さく蹲る人を見つけた。
「ユーリ」「解ってるよアルこそあんまり怖い顔しないでよね。只でさえ愛想無いんだから」「なっ!?貴様っ!!?」「しー!」
小声で軽口を叩きながらゆっくりその子に近づく、よく見るとウィスタリアの執事服を纏ってる。こんな子供が何故。そんな疑問を抱きながら、勤めて優しく声をかけた。その数秒後彼の顔を見てまさか動揺するとは夢にも思ってなかった。