第3章 里帰り
あの後、再び捜し物を見つけにエントランスホールに向かったが捜し物は見つかる事はなかった。
一睡も出来ずセレモニーの2日目を迎えたが、散々であった。
普段の業務時間に遅れ、慌ててた為ルイ様の朝の紅茶も普段お出してしている物と間違え、食堂のテーブルクロスの色、食器の配置を間違えると言う初歩的ミス。普段とは違う僕の様子にジル様が「昨夜何があったのか」聞かれたが、それを曖昧に濁す。
一瞬だけ、眉を寄せ今日は仕事を休む様に言われてしまう。
他の人の手伝いをしても、細かなミスを起こしてしまい、何があったのか言及されるも答えることが出来ず。結局休む事となって、僕は再び捜し物をする事にした。
しかし、何処を探しても見つからない。
目立たない様に隠れて探しても見つかってしまい、何をしているのか聞かれたが逃げる様に去る。その事の繰り返し
誰もいないお城の薔薇園の中で蹲る。薔薇の芳しい香りが漂うが落ち着くことが出来ず、涙がポロポロと溢れてきた。
「・・・うぐ・・・・っつ・・・・ひっぐ。」
声を押し殺して嗚咽を必死に抑えようとするも、捜し物が見つからない真実が心を掻き乱す。
(泣くな。泣いても何にもならない、ここに来たからには一人でしっかり・・・)
芳しい花の香りは故郷の花園とは明らかに違う。人も空も家も、自分の故郷に繋がる物は何一つない。本当に自分はたった一人で遠いところに来ていたのだ。今更ながら住み慣れた場所と、離れていたのだと気付かされた。そして失くしてしまった大切なもの、この世にたった一つしかないのに、
二度と見つからないかもしれない。
不安が津波の様に押し寄せて来て、耐えきれず声をあげて泣いてしまおうと思った時
「ねぇ、どうしたの?」「こんな所で子供が一体何をしている。」
声がして、慌てて目線を上に向ける。黒い服を纏った二人の男が目の前に立っていた。