第1章 序章
「お前にいろいろ情報提供してんのに入れてくんないし」
酒に酔ったようにうなだれだした。因みに今昼間である。
夜の仕込みの最中。
「お前は、絶対城に入れるなってジルに言われてたんだよ。
プリンセスの実の兄ということで官僚達に利用されないように。今は入れるんだろう??俺わざわざここに寄るの手間なんだが、
いっそ今度開かれるウィスタリア王家付の執事にでもなれば」
「興味ないし、おれ料理人だし。
あんな場所、妹がいないんなら入るかよ。今まで情報タダでくれてやったんだ。これくらいしろよ。つーか駄弁る為に来たのかよ・・・耳寄り情報ないんならほんとマジ帰って。」
弱弱しくうなだれるさまは、ジルからユーリ経由で最愛の人の血を分けた兄弟の情報を聞きつけた国王が挨拶に来たときに重なる。
国王の前では平静さを装い終始笑顔であったが、祝い酒と称し国王を一献だけ飲ませ先に帰し側近二人と俺とを残したとき事態は一変した。
あの日の事を振り返るとシドは眉間に皺をよせ米神に指を添える。
完全に思いだす前に本題に入ろう。
「いや、ずいぶん前に依頼されたもう一人の方だよ」
泣き上戸と化していたソルの顔が一変する。
「・・・・・・見つかったのか??」
「あぁ、それらしい人間がウィスタリア王国の西の領地にきているって聞いた。」
地図で目撃した地を示す。
「数年前まで家族で暮らしていた場所だ。置手紙を一応置いてあるから、もしかしたら――――」
チリリン・・・・
扉に設置されたベルが響く
「悪いな、店はまだ開いてないんだ・・・出直して」