第3章 里帰り
香りに誘われ、たどり着いた場所は、ウィスタリア城のエントランスホール・・・。
かつてプリンセスとして初めて彼女にあったのはこの場所だった・・・。
真夜中の為明かりは消され、静かなホールに花の匂いだけが残る。
あたりを見れば、色とりどりのリースが飾られている。
明日はこの中からリースを決める・・・しかし、花の香りはこのリースからではない・・・。
いったいどこから、そう思い中央の踊り場に目を向ける。
大きな一枚の肖像画が飾られていたカーテシーをとった女性の姿・・・。
「ステラ・・・・。」
膝が床に着くのではないかと思う位深く膝を曲げ、こちらに微笑みかけるウィスタリアのプリンセス。
このエントランスホールに来た人々を歓迎するかのように・・・・・。 舞踏会の際、彼女はお辞儀をする立場の人間ではない・・・それでも、いつも招かれた人達に跪き礼を取った。
相手の目線に合わせるように相手に敬意をもって優雅に慎ましく・・・。
「・・・・・待っていろ」
6年前、満天の星空の下で彼女に誓った時の様に跪きそう言った。
その時、視線の先にリースが置かれていた。
黄色と白、オレンジの薔薇とスターフラワーと呼ばれる星の形をした色とりどりの花と薄紅と紫のスターチスで作られたどこか素朴で美しいリース。
リースからほのかに香るカモミールとミモザの香りに誘われるように手に持つ
一つ一つ丁寧に編まれた花達しかし、カモミールもミモザも使われてない。
ならば、この香りは何処から・・・・?
パタパタ・・・・・・
軽やかな足音がこちらに近づいてくる・・・・・、その足音が執務室に訪れる時の妻の足音に似ていた・・・。
もしや・・・・
「・・・・・・・・あ」
振り返った先には年端もいかない子供がいた。