第3章 里帰り
あんな安い挑発に乗ってしまった事はいささか、かなりショックな事ではあるが、あそこまで言われては引き下がれなかった・・・。
ソルの言う通りだ。子供だから・・・小さいから、腕のリーチもなく力も弱い・・・剣なんて、振りたくもない・・・。
でも、だからと言って、子供は大人に守られるだけではない・・・。ウィスタリアの西辺境で同行者とはぐれてから一人で王都を目指し、たどり着いたのだ。
それに・・・・
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「何なんだ、あの飛び入りの動き・・・。」
小さな体はまるで風の様に走り、時に飛び・・・素早く懐に近づき、騎士の首元に手を添える。騎士は一度だけ口籠った声を吐き脱力する。
身の丈を超える細長い棒は騎士たちの剣戟を反らさせ、巧みに懐へと入る手助けをするだけではなく、首、額、喉、胸、膝、肘・・・・急所と呼べる部分を的確に突き反撃のチャンスをまるで与えなかった。
まるで獲物の急所を的確に食らいつく狼のようだ・・・。
「うひゃ~、凄いなぁ・・・体術も中々じゃん。」
「急所も的確だな・・・。」
シュタインの騎士の代表ともいえる二人だが、今回は不参加であった。こんな強そうな飛び入りがいたなら・・・・参加すればよかった。
そんなことを考えながら、
「あっ!そういえばジル様。ルイ様の新しい執事さんってどんな人?全然見かけないですよね」
「あぁ、今は休憩を取らせているので、後日紹介しますね。」「・・・・・驚くと思うよ」「何か、含みのある言いかけですね・・。」
話していると、喧騒が増した・・・。
『おい、あいつって』『ソルじゃないか!?』
『騎士学校時代、アラン騎士団長を打ち負かしたっていう』『マジかよ』『こりゃ見ものだわ』
「あれ?珍しんじゃない・・・彼が王城にいるなんて」
プリンセスが行方不明になって以来一度として来なかった彼が、なぜ
「両者、構え・・・・・・はじめっ!!!!」
金属音が澄んだ青空を劈いた。