第3章 里帰り
「では、明日はセレモニーに向けて正午に出立いたしましょう。先方にはすでに使いを出しております。」
アルバートは手に持った書類を確認しながらゼノに報告する。
こうして敬愛し尊敬する自身の主の執務室を訪れたのは2か月ぶりだったが、いつもと変わらない様子だ。
ユーリはちゃんとお仕えしていたらしいな・・・。
自室に戻った時は賊が侵入したのかという位の荒れっぷりで眩暈を覚えたが・・・とりあえず良しとするか・・・。
「・・・・・そうか。東の国での調査はどうだ?」
この調査であの森から東に位置する国はすべて調べたことになる・・・・。
「・・・・王妃様のお姿は見つからなかったそうです。
私も今回の調査に参加しましたが・・・」
「そうか。・・・・・すまなかったな。無理を言って」
本心はご自身で探したいのだろう。しかし、国王である以上私欲に駆られ、国を開けてはいけない。
労いの言葉の中に哀しみが拭い切れない心が声として現れる。
「ゼノさ・・」「はいは~い!ゼノ様お茶を用意しましたよ~・・・・あ!帰ってきてたんだ。アルおかえり~」
騒々しい声と共に入ってきたユーリ
「ユーリ貴様!ゼノ様になんという無礼を・・・公私を分けろ・・・いくら貴様が・・・!」っは!いかんいかんここは執務室だ。誰が聞いているとも限らん。
さわやかな香りが漂う・・・。若草のような色合いがまた美しい・・。
「・・・・いい香りだな」ゼノ様は目を和ませた。
「東国のお茶だそうです。フェートさんが城下で買ってきたものをおすそ分けしてもらいました。
あっ!アルは自分で入れてね」「いらん!!」
「フェートは・・・最近どうしている」
ゼノ様の顔に苦悶の表情を浮かべる。フェートとは、以前官僚に連れてこられたゼノ様付のメイドだ。王妃様と同じ顔にされた。
「よく働いてくれてますよ。最近は城下に出歩くようにもなりましたし他の人達とも大分打ち解けています。
このお茶も行きつけのお店のだそうですよ」
「そうか・・・よかった。」
ゼノ様はこうして時折フェートについて聞く、官僚がした行いに対する償いの為。不自由がないか気を配っていらした。
「そういえばウィスタリアの新しい執事さんどんな人だろう。楽しみだな」