第3章 里帰り
ルプスがこの国にきて5か月が過ぎた。
彼は本当に優秀だった。歴史学、この国のしきたり、話術、政治における論議もまるで水を吸うスポンジのようにメキメキと吸収して自身の知識に変えてしまう。
教える立場として鼻が高い・・・。
『レオ!キタ!キタ!!』
セバスチャンは忙しなく羽を動かし、嬉しそうにしゃべりだした。
「レオ様!こんにちわ!!!」「あぁ、こんにちわ」
『イラッシャイ!プリンス!!イラッシャイ!!』
「セバスチャンこんにちわ!元気?」
『ゲンキ!セバスチャン、トッテモゲンキ!』
そう言ってルプスの肩に止まる。小さな彼の手がセバスチャンの首を優しく撫でるとウットリしだす。
最近のセバスチャンの定位置らしい・・・。
「お茶をご用意させていただきました。どうぞ」
彼がここに来てからというもの、講義の前後にこうしてお茶を持ってきてくれる。最初は鼻に付く独特のにおいが駄目だったが、味もよく体の疲労が嘘のように消える。
「はい、セバスチャンにはハーブビスケットだよ」
『アリガト!プリンス!!オイシイオイシイ!!!』
「さて、今日は特別に『シュタイン国』について講義していくよ。」
「しゅたいん??」
「うん。もうすぐシュタイン国との親睦をかねたセレモニーがあるから、粗相がないようにジルから頼まれてるんだ。このセレモニーは一般人も参加できるから招待した人がいたら手紙を書いてもいいよ。勿論セレモニーまでまだ時間はあるから故郷の人にも」
シドからの報告を聞いて、また後日調査をするとしても何かわかればという下心もあった。
「・・・ありがとうございます!」笑顔で礼をいうルプスの顔に若干、寂しげな不安げなものを感じた。
講義は滞りなく終わった。普段、興味深げに名産や文化の違いなど質問攻めする彼にしてはひどく静かだった。