第3章 里帰り
「でも、プリンセスが任命されてすぐ、前王がお倒れになって、プリンセスが国務をしなければならなくなった。
病床に就かれていた陛下の御前で官僚たちの好奇な目と悪意に満ちた目に晒されながらもプリンセスは毅然とした態度で国を背負う覚悟を示したんだ。」
「かっこいいですね。そのプリンセス。」
「うん。もちろんそれでも僕は彼女は城にいるべきじゃないそう思って白い花のしおりを彼女に渡したんだ。」
公爵家に引き取られる前に持っていたおとぎ話に出てくる花のしおりを・・・・。自分にとっては幸福を招くものではなかったしかし、彼女の当初の目的はこの花を見つけ教え子に届ける事・・・・きっと城を出ていくだろう。
「しおりを渡した次の日も彼女は城にいてプリンセスとしての公務やダンスのレッスンを受けていた。
しおりは渡さなかったのかと聞いたら、こっそり深夜に城を抜け出して教え子に渡したのだと言っていたよ。僕にありがとう。とも・・・・しばらくして教え子から母君の病気も治ったという知らせと共にしおりが戻って来た。」
そのしおりはどうしたっけ、自分には必要ないものだと言ってプリンセスにあげた気がする。
「それからもプリンセスは自分以外の誰かのためにいつも一生懸命公務に励んで・・・やがて一人の男に見初められた。二人は惹かれあうように恋に落ちたけど・・・プリンセスの方は・・・今」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「ごめん。これじゃあ幸せを運んできてないね。」
6年前でこの物語は終わった。
「白い花の話をしていた時ははさま言ってたんです。
このお話に出てくる女の子は幸せを願って花をくれた王子様の優しさが何よりも嬉しかったんだって、だから誰かの為に一生懸命だったプリンセスもルイ様や教え子からたくさんの幸せを白い花を通してもらっていたと思います。幸せだったと思います。」そう言ってルプスは書斎を後にした。
6年前に行方不明になったプリンセス。今でも目に浮かぶのは白い花のしおりを受け取った時の笑顔と・・・・ゼノ様の傍で微笑む顔。悲しげな顔は不正により彼との婚約が解消され城に戻って来た時だけ・・・。ダンスのレッスンを任せられていた僕に「せっかく教えてくれたのに・・」と、そんな彼女を僕は抱きしめた。
「あの時・・・・僕は君の王子様に少しでもなれてたのかな?」