第3章 里帰り
「君の母君はこの国の出身なのかな?」
「わかりません。でも、村の人達に聞いてもその話を誰も知らなくて、城下の人のはなしとも違っていました。
寝物語として聞かせてくれたので白い花がどんなものなのかすらわかりません」
それでも、書斎にあった物語を探して読んでいたははさまの事が少しでもわかる様な気がして・・・。
この国に来たのは村に住む薬師様の出身国だというのが主な理由だった。6年前深い森の中で倒れていたははさまを助けた薬師様・・・薬師様のおかげでははさまは僕を生むことが出来た。
みんなに好かれている優しいははさま。でも、ははさまがどこの生まれで。何故、あの森にいたのか・・・だれも知らない・・・誰にも言わない・・・。
そんなははさまが唯一僕にだけ教えてくれたのは故郷に伝わるという寝物語『白い花』と『オオカミと少女』の話
この国の出身ではないのかもしれない・・・でも、城下町や城の中を歩くと・・・・何故か母がいるようなそんな感覚になった。
知らない国のはずなのにどこか懐かしい・・・・・。
最近ではははさまはこの国の生まれなのではないかという思いすらあった・・・・そして薬師様とも恩人以外の何か関わりが・・・・。
「この国にはもう一つ『白い花』の逸話があるんだよ。
プリンセスに幸せを運んできたって」
思考が一瞬停止した。きょとんとしてるとルイ様は思い出をたどる様に言葉を紡いだ。
「7年前、この国のプリンセスを選ぶ舞踏会の日。ある町娘がお城にやってきた。開門時間はとっくに過ぎていて、城壁を登ろうとした所をアランに見つかって何とか見逃してもらい・・・その人はお城の中庭へと向かったんだ・・・。」「え??どうして」
「彼女の目的はプリンセスに選ばれることではなくて、お城にあるという白い花を探しに来たから。城下に住む自分の教え子の為に・・・。真夜中まで舞踏会に参加するために着てきただろう綺麗な真っ白のドレスが汚れることも気にする素振り無くでも、花は結局見つからず。その町娘は何故かプリンセスに選ばれたんだ。」「その人はどうしてプリンセスに選ばれたんですか」「ジルが何を考えていたのかはわからない。ただ、僕は賛成できなかった。」
それは今でも時折思う・・・。あの時プリンセスに選ばれなければ彼女はこんな風に故郷を離れることはなかっただろうから。