第3章 里帰り
肩を揺り起こす優しい手を感じた。
「ん・・・・くわぁ~・・」
まだ夢うつつなのだろうか、自分が間借りしている部屋ではない・・・。ここは何処なのだろう?眠気が抜け切れてない頭で考えると
「こんなところで寝ないで・・・。」
呆れたような口調で言われギョッとする。
「ルイさまっ!??」「何故こんなところで・・・」
「えっ?えっと白い花を探そうと思って・・・・。」
ようやく思い出した。城下のソルの家に泊まりに行った時、兄さま達が話してくれたお話を・・・・
『なぁ、『ウィスタルの花物語』って知ってるか??』
『知らない、何それ???』
『知らないに決まってるでしょ?あの花はお城にしか咲かないんだから』『ねがいをかなえるおはななのよ』
『????』 『昔からウィスタリアに伝わるおとぎ話よ。』
そう言って、母様が話してくれたのは昔一度だけははさまが聞かせてくれたお話に似ていた。
『そんなすごい花がお城にあるんですか?』『さぁ、でも。絵の挿絵に描かれている花と同じものは実際に存在するらしいわ・・・手にした人に幸福を運ぶとも、運命を知らせるとも。どちらにしても珍しい花なのよ・・・。ねぇあなた?』『ん・・・、あ、ああ・・・。』
話を振られたソルは引き攣った笑みを浮かべていた。
その後物語と信頼する両親からの言葉を信じていた末娘に『白い花がほしい』とせがまれる事になるとは予想していた。 珍しいとはいえこうして見たことがある人がいるならふとした時に見つかるかもしれない。
そう思ってあっさりと承諾した。
城の庭には様々な色と種類の花がたくさんあった。もちろん白い花もたくさん・・・・しかし、肝心の願いをかなえる白い花がどんな形だか知らなかったのだ。
「君でも初歩的なミスをするんだね」ルイにそう言われて羞恥で顔を真っ赤にした。
「それに、意外だった。君が絵本の話を信じるなんて・・・。」「・・・・・昔、母が話してくれたんです。
『病気になった大切な人の為に白い花を探していた女の子に賢く綺麗で優しい王子様が自分の庭に一輪だけ咲いていた白い花を摘んで持たせてくれた。』そんな結末の話を・・・。」