第2章 考察と調査
「では、収穫はなしという事ですか?」国王側近のジルの声が冷たく響く、そこらの官僚なら、蒼褪め平謝りする所だが、言葉を浴びせられた人間は動じていなかった。
「あいつの住んでいた村に行って来たがそれらしい人間はいなかった。というか、住民からは何も聞かなかった。」「どういう事?」ルプスの話では、長閑で人が良くいい村だと名産品まで自慢していた。彼を採用するにあたって、また、今回調査させてもらうにあたってアルス国王にも書状をしたためた際にも類似した話が返ってきた、ご丁寧に紹介状も送ってくれた。
「あぁ、モノ凄ぇ歓迎っぷりだったぜ、但し、あのガキの親については全く話して貰えなかった。まるで緘口令敷かれてるみたいに」
「ルプスについては?」レオが問いかける。「そっちも探り入れたが素行については際限なく話して貰えたが何処に住んでいるかは話題にも出させなかった。村のガキ共に聞こうにも直ぐ傍に大人がいるから隙もねぇー。」 運良くガキ一人の時を見計らってもガキの方が警戒する始末であった。たかが 小さな村の住民一人調べるのにここまで手こずるとは思わなかった。
「収穫と呼べんのは厩が一軒だけ宿屋の近くにあった事と留守の人間がガキの他に二人だけっつー話だ。厩は建てられてまだ新しい・・・・。」あの小さな村で馬を飼っておく余裕がある様には見えなかった。
「ルプスの話ではここに来る際の同行人は一人のはずだ。」
アランがようやく口を開いた。
「だからってそいつが何処に行ったかなんて調べるのは御免だぜ?」
「もうすぐプリンセスの御成婚を記念してシュタイン国との友好と親睦を兼ねたセレモニーが始まります。此方としても忙しい時期になります。時期を見て再度、調査を依頼しましょう。」
そう言って今回の調査報告についてお開きとなった。
「所で、ルイは基本子供に弱いから分かるとしても、アランにしては随分可愛がってんじゃねーの、騎士団長自ら乗馬の指導とは」
「・・・・・別に、ただの気まぐれだって。馬があいつに懐いてたから」からかいの含んだ言葉に眉を寄せながら応える。
「そういえばセバスチャンも彼に懐いてたよ。存外動物達は直感で分かってるんじゃないか彼が何者なのか」
「レオ。まだ確固たる証拠は無いのです。思いはどうあれ口は慎みなさい。」「ジルは固いなぁ、相変わらず。」