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[イケメン王宮]グッバイ!racrimosa

第2章 考察と調査


「いらっしゃい。」店に入ると、花や薬草の独特の匂いが入り混じっていた。
店の中には年若い店主と思しき女性が一人。勝気そうな声と裏腹に柔和で優しげな面差しであった。
「大変申し訳ございません。今薬師の方が留守にしております故薬の調合は出来ません。入り用の薬やお茶などが御座いましたらお声かけ下さい。」
背中くらい新雪の様に真っ白な髪は陽光受けてキラキラと輝いていた。此方を優しげな眼差しで見つめる目は金色に輝いている様に見える。こんな色彩の人間がいるのだろうか?まるで月が人の形を成して現れたかの様にその女性は儚げで美しかった。
「ここは薬屋さんでしょうか?」「正確に言えば花や薬草と言った植物を用いた問屋ですね。薬、染物、香料、お茶。植物で作れる物は何でも揃えております。薬師である店主は他国で医術を学んでおります故、怪我の治療、生活習慣の見直し相談も承ります。お客様失礼ですがお時間が御座いましたら、此方の薬茶の試飲をしていただけませんか?」
そういって差し出されたお茶は鼻に抜ける爽やかな香りが印象的だった。味は思っていたよりも甘く爽やかで薬草特有の臭みもなく美味しい。感想を述べると女性は嬉しげに笑う。
「地元でよく飲むブレンドです。疲れた時や落ち込んだ時に、勝手な印象ですが何やら酷く気落ちしていらっしゃるご様子でしたので。宜しければ何か入り用のモノがありましたら薬師に申し付けますが?」とても優しく親切な方しかし、いくら凄腕の薬師でも私のこの顔はどうする事も出来ないだろう。断りを告げ柔らかな印象の香りのポプリを一つ買う、陛下が少しでもお休みになれる様に。
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・・・・・・・・・・・
固い表情をしたお客様が帰ってから暫くすると、
「たっく、最悪だわっ!髪用の染料切らしてるとか!?しかも染め抜き剤相場2割も高いしぼったぐりよっ!?」
「アルス国での生活が板についてるね。染め抜き剤足りました?」
同じ顔立ち、同じ声なのに・・・仕草と口調により赤の他人と思われることがしばしば。「どうだろ?一応全部ぶっかけた。どう。」
座ってる私が見やすい位置まで頭を下げると陽光に輝く金の稲穂様な髪が綺麗に揃っていた。その事を告げるとニッカリと笑ってみせた。「店番ありがとっ!」「次からは絶対にしませんからね」
そう言って深くフードを被り店を後にした。
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