第2章 考察と調査
ドライフラワー作りは村の人間ならば誰もが知っている技法だった。作るのも苦ではなくむしろ好きだった。
自分が送った白い花をははさまはいつも嬉しそうに受け取り丁寧にドライフラワーやポプリに加工する。そうして家の中や外壁、宿の方へ飾るのだ
『自慢したいの。私の大事な大切な宝物がこんなに素敵な花をプレゼントしてくれたのだもの・・・。』
そのははさまの横顔を見るのが好きだったし、やり方もよく覚えていた。
沢山あるので一束ずつ・・・でも丁寧に作業を進めていく・・・色あせたメッセージカードには老若男女問わず様々な人の文字でプリンセスの帰還を待つ言葉が送られていた。
一つずつメッセージを読みながら進めていくと一輪のマーガレットと小さな子供の字で書かれたものがあった。
カードの中には見たことない白い花のしおりが挟んであり
『先生・・、早く帰ってきて。』
インクが滲んだ文字で書かれていた・・・。
プリンセスになる前の知り合いなのだろう・・・・そう思ってこのメッセージと花を置く場所を決める。
ドライフラワーを飾るのは時間がかかるので毎日少しずつ明け方前やみんなが寝静まった深夜に行っていた。少しずつ花の場所や種類を変えていくと・・・お城の中は少しずつ明るさが戻ってくるようだった。
飾られた花を見てその道を通る人たちに笑顔がともる・・・。
『ははさまもこんな気持ちだったのかな』
ははさまが近くにいるような気がしてとても安心する。
そうして今日はプリンセスの部屋へと続く回廊へと足を踏み入れるとても静かで・・・綺麗なのに寂しい回廊・・・。
あのメッセージカードはプリンセスのお部屋の扉に飾ろうと思っていた。マーガレットの花は押し花にして白い花のしおりと一緒にカードに添えて、しかし、部屋の前の扉は想像していたよりも高く手を伸ばしてもうまく届かない
他の回廊には椅子や花を飾るテーブルなどが設置されているが・・この回廊はそれがない、毎日代えられている花の花瓶は釣り式でこれも自分には届かない・・・。いくら小柄でも、いすなどを持って歩きまわるとばれてしまうので・・・別にばれてもいい気もするがそれだとつまらないというちょっとした遊び心だった。
しかしどうしよう、そう思っていると不意に体が浮かび上がった。