第2章 考察と調査
気になりだしたら、止められない・・・。
興味も手伝って、どんな奴が飾っているのかと、深夜城内の見回りをすることにした・・・。
今日はやけに月が明るかった。
このところきれいに磨かれた回廊は月明りに照らされ、白く輝いている・・・・。
静かな回廊に自分の足音だけが響く・・・。心地よい風が城内に飾られた花の香りを運んでくる・・・。
「・・・・・・・っ」
気が付くとある回廊に立っていた。プリンセスの部屋に続く回廊だった。この回廊だけ花は飾られてない・・・。
ここを通るのは実に6年ぶりだ・・・捜索の部隊を率いたりで滅多に城にいなかったし、報告を終えたら早々に騎士団の寮に戻っていたためだった。
昔と変わらない回廊に安堵と少し残念な気持ちが過る。
「あいつがあの回廊見たら喜ぶんだろうな・・・。」
たくさんの人が送ってくれた花を知って、その花をとっておこうとドライフラワーにしてくれた人を知って・・・。
陽だまりのような幸せな笑みを浮かべるプリンセスの表情が目に浮かび、自身も思わず笑みが綻んだ事に気付かない。
ふと、ミモザとカモミールの香りが後ろから香る・・・この匂いは・・・・・
驚くほど速く振り返った。
思い描いていた人物の姿はなく・・・・柱に手を伸ばす小さな影
手には紫基調とした白と桃色の花を品よく合わせた綺麗なドライフラワーを持っていた。
6歳くらいの少年・・・アランは以前兄たちが話していた執事見習いの事を思い出した。
目の前にいるのがその子らしい・・・手に持った花をプリンセスの部屋の扉に吊るそうと背を伸ばしていたが届きそうにない・・・。
すこしため息をつき音もなく背後に忍び寄りその体を抱き上げる。
「うわあっわぁ!??」思っていた以上に軽い。
男の子はびっくりした顔でこちらを見る。驚き、きょとんとした目が、塀に上って城の中に入ろうとしたプリンセスの顔と重なる。
「ほら、早く吊るせ。届くだろ」動揺を隠すように男の子を少し揺する。
促されると男の子は慌てて、花を吊るす。花がつぶされないように丁寧に添えられていたメッセージカードと一緒に。
飾られたのを確認してゆっくりおろしてやる。
「今度からは昼に椅子使って吊るせよ。夜遅いんだし」
そう言ってアランは男の子を置いて回廊を後にした。