第2章 考察と調査
今日は珍しく、明け方近くに目を覚ました。
本当に珍しい、昨日しこたま飲んだのに・・・う”ぅ~頭いてぇー。年だわ・・・;
出来たてパンの香ばしい匂いとカモミールの香り、あっベーコンのいい匂い・・・今日はなかなかに豪勢な朝食だ。
昨夜泥酔して帰った時の妻の剣幕から、今日は朝食を諦めていたが、どうやら機嫌がいいらしい・・・。
ここは一つ、日ごろの感謝もこめ、新婚時代の定番後ろからハグでもするか・・・・。
そう思って布団をまくれば、そこにはまだ夢の中にいる妻の姿・・・・。
「あれ・・???」
それじゃあ誰が・・・・? キッチンへと向かうと
「あぁ、おはようございます。早いんですね・・・。」
そう言って笑顔であいさつしたのは昨日我が家に泊めた客人だった。
城の執事の上着を椅子に掛け、袖をまくった姿でフライパンを操る。おぉ・・・・中々のフライパンさばき
フライパンの中の卵は綺麗な三日月形で焦げもない・・・ハーブのいい香りも漂ってきている・・・・。
「早起きなんだな。昨日はよく眠れたか?それに悪いな・・お客さんなのに朝飯作らせて」
「いいえ、昨日は泊めていただいてありがとうございます。せめてもの気持ちです・・・。」
律儀な子だ。それにこの年の子にしては手際がいい・・・まぁそうじゃなきゃ王室直属執事の推薦なんて取れないか・・・。
「家でもよくこうして作っていたのか・・?」
「・・・・・そうです・・ね。家では作りませんでしたが、村の宿屋の手伝いとか・・・村の行事で」「そうなのか家でも手伝っていたのかと・・・」「・・・・いつも手伝う前に出来上がってましたから・・。」
少し、寂しげな表情が見える・・・。
「俺より早起きなんですよ・・・いつも競争するんですけど負けっぱなしです。」「・・・・・・。」
「『働かざる者食うべからず』なんて言っておきながら、家の事や自分の仕事の手伝いは一切頼んでくれなかったので・・・とても悔しかったんです。」
わざと明るく笑う少年は、とても大人びていた。
「・・・親ってのは、自分の子供に何の苦労もさせたくないんだよ。自分の事は殊更・・な」
そう言って頭を軽く撫でてやる・・・・それでも複雑そうな顔をしていた。