第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
アルス国の城は庭や謁見の間は一般市民に普段から公開されている。
「キャハハッ!」「キャッキャ!」
ココはそんな場所から少しだけ離れた。中庭と呼ばれる森。
そこには小さな男の子二人が楽しげに遊んでいた。
「コラっ!悪戯ばかりして、許しませんよ。」
そんな二人を温厚そうな顔を必死でしかめ、怒り顔を作った年若い女が二人のそばに駆け寄る。
細い腕に二人の子供を抱えて、少し揺する。
一瞬、全身がガクンと落ちる感覚に子供たちは瞬くも、すぐに笑い出す。
反省の色なしである。
お部屋の花瓶を倒して水浸しにし、ここまで脱走した後泥んこ遊びと、掃除項目のオンパレードの悪戯をしてくれたのに。である。
深い溜息をつくと、それを愉快そうに忍び笑いをする声を聞き振り返る。
「!いらっしゃるとは存じませんでした。お見苦しいところを見せました。」
「いや、よいよい。しっかりと躾けてくれてこちらとしても助かってるよ。」
温厚そうな少しばかり恰幅のいい男と
「もう少し手荒に扱っても良いのだぞ?」
凛とした佇まいの気品のある女。
見た目と反してかなり過激な事を言う方だ。と苦笑が、溢れそうになるも
「いえ、子供とはいえ高貴な方。私などが手荒に扱って良い方ではありません。何より自分の子ではないのですから。」やんわりと言った。
「高貴な身分だからこそ躾ける義務がある。とりあえず口でわからないうちは体で覚えさせた方がいい。」
「結果、武力行使のゴリ押し人間になる、と。君に任せると少々、だいぶ・・・かなり、やんちゃに育ったよねぇー。」
「お前に任せても、ガサツに育つがな。まぁやんちゃで粗野で放浪癖持ちの国王陛下の子だからな。」
「行動派で力自慢で、かなりやんちゃしてた王妃の子でもあるよ」
軽口を叩き合う二人は、結婚して随分、時が経つそうだがまるで悪友か何かのようだ。
「とにかく、ウチの猿並みのガキを立派な人間にしてくれ」
「ナースメイドの働きぶりに期待してるぞ」
「あ、は、あはははは」
苦笑いするしかない。二人のやり取りを聞き自分に教育係などという大役が勤まるか、不安になったのは胸の内に秘めておくとしよう。