第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
それから、2度ほど季節が代わりに、この国に小さな王子様が生まれた。
「次は女の子が良かったんだがなぁ」と、少しだけ残念がる国王様だったが、生まれたばかりの命を大切に抱く様は何よりも尊く、夫婦で微笑み喜び合う姿は人々に幸福を感じさせた。
「とはいえ、そろそろ王子生誕のパレードやめてほしいわね。五月蝿くてねれない」
「まさかかれこれ3日続くとは、」
「んー?あと、2日は続くんじゃないかな?因みに第1王子様の時は2週間続いた。女の子だったらまぁ、最低でも1週間はパレード続けるって言ったよ。」
「「に、二週間」」そんなに続けたら貿易に差し障りが・・・ってこの国あんまり他国と交易しないんだっけ?
「逆に、パレードを開くからこそ他国の人間が入りやすいんだよ。ほら、王子様とか誕生したら少なくとも隣国は挨拶とかしなきゃ、でしょ?その間に交渉したり、売り込んだり、うち周りが森ばっかで入るのも一苦労だからこうして呼び込まないと中々来ないわけよ。特に薬とか精密機器とか不容易に渡すわけにいかないし」
「お隣って、隣国のシュタインは閉鎖的だから来ないとしてウィスタリアからも何か届いてる訳?」「いや、来てないと思うよ。向こう側からは自然の交通規制かかってるから。そもそも手紙送ってないかも、」
一度、慕わしいあの人の治める国の名を聞き少し肩が跳ねたが気づかれてないようだ。
師弟コンビはどうやら今開発している新薬について話が盛り上がりだしたみたいだ。
優しくて暖かなこの国の人達にどれだけ助けられた事だろう。
遠い国に来たけれどこんなに心穏やかに過ごせるとは思いもしてなかった。
・・・・ーーーーっ!
仮眠室に寝かせていた。私の宝物が起きたらしい。二人に気づかれないように、席を外す。
部屋に入り、ふくふくとした頬っぺたを優しく撫でてやると手をこちらに伸ばす。それに応える様に優しく抱き上げると、確かな温もりが全身に巡る。
「どうしたの?ルプス」
優しく問いかけると先程泣いていたのが嘘の様に声を上げて笑っていた。