第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
今日は 体調も良く、運動の為丘まで一人で登った。
一人になりたかったから、
小高い丘は長閑で何処か神秘的な雰囲気でお気に入りだった。
湖の近くに生えた大木の幹で少し休息をとる。
心に落ち着きと安心感が戻るもやはり気持ちが晴れない。
検診の為訪れた王都で不穏な噂を耳にしたせいだ。
最近妊婦や乳児ばかりを襲う人攫いがあるらしい。
噂だけというのはその被害者が何処の誰か判明していない。
検診に来ていた妊婦がある日突然来なくなる或いは姿を見かけなくなった。と言うもので、その妊婦の大半が独り身だという事。乳児の親もまた然り。
独り身の為近所や担当医達で気にかけているものの、込み入る事も出来ない。
『まぁ臨月で検診前に産気づいて、と言うのも考えられるし。心配ないでしょう。とも思えますが、近所の人も姿を見ないなぁと不安がってる矢先に姿を見たと言う人もいるから』
とは言っていたが、
「・・・・・・」
不安で胸が押し潰されそうだ。これが無差別で独り身の人間を襲っての事なら、しかし、まるで人を探している様な行動が、自分の子供を狙っての事のような気がしてならない。
優しくお腹を撫でれば小さくでも、確かに蹴り返してくれるたった一つの宝物。
あの人との恋の証。
終わってしまった物語の欠けら。
お願い。何ももう望まない。帰る事も、懐かしむ事も、愛しく思う事も、迎えに来てもらう事も、この子を産んで過ごす事以外望まないから
お願いだから、これ以上、わたしから
「奪わないで」
この願いは誰が叶えてくれるのだろう?いるかわからない森の神か、あの欲に濡れた瞳の御仁か?どちらにしても願いすがるしか今の自分に選択肢はない。
自分はこんなにも弱く愚かなのだから、