第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
「こうして、嘘をついた少年は村の人に信じて貰えず、村にオオカミがやって来てしまい皆んな食べられてしまいましたとさ、おしまい。」
「面白かったー、」「村のオオカミのお話とは違うね」
「ねえねえ、他にはどんな話があるの?」
大きくなっていくお腹の子とは逆に私は少しずつ身体が動かなくなった。ただの貧血で倒れるのではなく。身体が鉛のように重く。手足が痺れていった。
そんな私の為、村の人は滋養のつく薬や食べものを毎日持って来てくれるが、よくなる気配がない。
1日の大半を寝台で過ごす私が出来ることと言えば刺繍かこうして、子供達の話し相手だった。そして、この子達
「お姉さんのからだ、よくならないね。」「俺の父ちゃんがとって来たアレやっぱ傷んでたんじゃないのか?」「今度ぼくのとって来た雉食わせてやるよ。」「なぁ、向こうの部屋雨漏りしてたから直していい?」
私より年下なのに生活力に非常に長けている上オマセだった。また、学習舎というものに縁がなく、子供達から学ぶことも大変多かった。
本当にこの村の人には良くして貰ってる何処の馬の骨とも分からない私に対して、こんなに親身になってくれた。
しかし、このままで良いはずはない。
「俺、明日は賃仕事の後、王都に牛を売りにいくからその時に薬も買って来てやるよ。」「ありがとう。でも、大丈夫よ。お仕事で得たお金は自分の為に使ってね。」
この村は元々は自分たちで牛や羊を飼い、森から取れた獲物を王都で買い取って貰い必要なものや税を支払う。ほぼ自給自足の生活。
医療が発達しているとはいえ、薬はそれなりの値段がする。
事情を知っている姉の師が安値で売ってくれていても。
森で狩をして得たものを王都で売っても足りない。
それを村の人は生計を崩して私の為に与えてくれた。
とても申し訳なく思えた。
税だってそれ程安くもない、だからこうして年端のいかない子供も駆り出されてる。
「この村の人達はどうしてこんなにも優しいの?」
「この村の子でババの孫だからだよ。」