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[イケメン王宮]グッバイ!racrimosa

第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道


走り、屋敷が見えなくなった頃。私は崖に立っていた。
逃げたところで何になるのだろう?
自分はこのまま子を産めるのだろうか?
産んだ後もし、自分が死んだらこの子は誰が助けてくれるのだろう?
あの屋敷に戻ってもこの子は幸せにはなれない。でも、生きることには困る事がない。
堕ろしたくない。でも、辛い思いをさせるくらいなら

崖の下は海、標高もそれなりに高いここから落ちたらまず助からない。
「ごめんね・・・、弱い母親で、産んであげられなくて。」

目を閉じ覚束ない足取りで絶壁の端に近づく、つま先のあたりに地面の感覚はない後一歩乗り出せば私の命は終止符を打つ。

「さようなら」
足から大地の感覚は消えまるで引力に引かれる様に下へと降りていく。
のは、僅かの時間。足はまだ宙に浮いている。

「みつけた」
後ろで聞いた声は息が整っていない。吐き出す様に荒い息と声が耳に響く。
「そこら中探した。全く、今まで何処に」
「お、ねえ・・・ちゃ、ん?」
疲労が色濃く見える顔は私にそっくりだけど、私にはない強さや明るさ、自信に満ちた表情。

「ここじゃあ休まらないね。まずは落ち着ける場所に行くぞ」

連れてこられたのは最初にお世話になった村。
「あんたを探していた時に見覚えのある染め方の布を見つけてもしかしてと思ったんだけど、ここに来てたんだ。」
暖かいお茶を出される。優しい香りに笑みがこぼれ口に含めばゆっくりと体内を癒していく。姉に何があったかは濁しながら説明する。
妊娠のこと、先生の診断の事。この子の父親が遠くにいて一緒にならない事。私の子だと隠さなければいけない事
「あんたを探すのにあの馬は目立つからここに置いてもらったのよ。あの時もっとちゃんと聞けば良かった。私としては早く家に帰って。」
「それは出来ない。迷惑だってわかる。でも、お願い。他に頼れる人がいない。」

我儘だとわかる。でも

「産みたいの、」
産む事が出来るなら、もし、私が死んでもこの人なら託せる。
最後のチャンスだと思った。
だから、何にだって縋ろう。
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