第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
目を覚ますと、見慣れないお屋敷の一室に私は寝ていた。
頭が痛い・・・気持ち悪い・・・。
思わず額に手を当て息をつく・・・。
「失礼します。ヨハンナ様がお待ちです・・・。」
扉が開きメイドが一声告げると従者が私を起こし半ば引きずる様に応接室に連れて行く。
「目を覚まされたのね・・・。」
応接室に行くと、優雅にお茶を飲む夫人の姿があった。
腰掛けるとお茶を入れたカップを差し出される。
香り高い紅茶の香りに思わず不快感が宿る。
つわりの所為だけではない、かどわかす様に連れてこられたのだ。毒が入っているような気がしてならない。
「毒は入っておりませんわ・・・・」「・・・・。」
優雅にほほ笑む夫人は玩具を見つけた幼児の様に無邪気で残忍な顔だった。
「確かに、見つけた当初は、人気のない場所に連れていってしまおうとしましたわ。でも、それより有効な使い道を考えましたの」「有効な・・・?」
「えぇ、私の孫が先日殿下と婚約しましたの。」
「こん・・・やく・・・?」
嘘・・・、そう思いたいが、そんな資格はない私はあの人の前から逃げたのだから・・・。
「でもね、陛下は一途な方、今はまだあなたの事を忘れられないみたいだから・・・あなたの亡骸でも見つければ、少しは孫に情を移してくれるかと思って、貴方を探していたの・・・。
この国へは旅行でしたが、貴方を城下でお見かけした時は天の導きだと思いましたわ。
ようやく天が私に味方したのだと、ようやく我一族から国母を輩出できると」
そう言いながら長い爪が私の頬をなぞる・・・ピリリと痛みが走り頬に赤い筋が伝う。
「悉く、貴方はそれを邪魔した。一年前も素直に国に帰り、婚約を破棄したままならよかったのに、卑しい身の上で陛下に取り入るだけに飽き足らず、前王まで唆すとは・・・。
どれ程その顔を切り刻み潰してしまいたかったか、貴方にこの憤りがわかりまして?」