第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
飛び出したはいいがこれから、どうしよう。
まだ平たいお腹を撫でる。何も感じないし以前と変わらないをでも、この中には新しい命が宿っている。
愛しい人の、愛しい人との・・・。
産みたい。でも、あの医師の言う通り。頼れる人はいない。ようやく、夢に近づいた姉の負担にはなりたく無い。でも、
「堕ろしたくない。」
自分の都合で奪いたくない。それにもう二度と会えないかもしれないんだ。でも、自分に何ができる?働けもしないのに、唯、お腹の子を苦しめながら結局は死なせてしまうかもしれない。
絶望が胸を覆い、暗い影が差す街道を歩いているとまるで死への道を進んでいるように思える。
「あら、貴方は・・・」
目の前に一台の馬車があった。象られた紋章に見覚えがあるそれにこの声は・・・。
「プリンセスではありませんか?」「アードラー公爵夫人」
シュタイン王国の貴族の一人だ。あまり面識はないが、王族の遠縁にあたるらしく要人として強い発言権があった。
何故彼女が此処に??
「私ね、貴方様を探していたのです。お国を出る前に秘密裏に・・・私の部下を跡につけさせて。よかったわー。貴方様を見つけることが出来て・・・!ゼノ国王陛下もお喜びになるわ」
そう言って朗らかな笑みを浮かべる・・・。
しかし、安心するどころか私の体は凍りついた。
「本当に跡をつけさせたのですか?」「えぇ・・・もちろん。」
「その部下というのは??」「私の別宅に今はいます。」
「嘘・・・」
あの森を抜けられるわけがない・・・何日もかかってようやく抜けることが出来たのだ。それに、助けるつもりでいたなら盗賊たちに襲われる事なんて無かった。
否、まさかあの盗賊たちは・・・
「お可哀想に・・・怖い思いをしたのですね。でも、大丈夫ですよ・・・。」
後ろ首に衝撃が走る意識がおぼろげに見える。
「すぐに悲しみも痛みもないところにお連れしますので・・・」
目の前に移る女の顔は憎しみを宿した悪鬼に見えた。