第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
この国では妊娠の疑いがある場合。問診以外に薬や血を取り調べるらしい。
「これで確実性が増すし、他にも病気や感染症予防にもなるんですー。だからこの国では、重い病気も早く見つけられるし、妊婦が死ぬ事はあまりありませんよー。いいですよねー」
「そうですね。医学がしっかりしている国はとても良いと思います。」
「研究しがいもありますー。まぁヤバい薬も多いですけど、おめでとうございます。3ヶ月と少しですねー。最後の時のは着床出血ですねー」
「は、はぁー」祝われている筈なのにあまり嬉しくない。この間の抜けた口調のせいなのか社交辞令に聞こえる。
「ところでお姉ちゃんには話します?」扉の方を見る。誰の事を指してるのか容易にわかる。
「あの、どうして?」
「あの弟子が他人にあそこまで親切にするなんてまず、ありえませんよー。仕事の時は金蔓。非番なら、とりあえず診察して、病院運んであとはその辺の同僚に丸投げですー。
研究と我欲にしか興味がないですー。変人なんですよ」
この人に言われたくない気が、なんか似ているのかも二人とも
「でも、非番でしかも栄養失調っぽい道で行き倒れていた自業自得人間を助けて栄養剤も与え、とりあえず俺来るまで見ていたなんて、天変地異の前触れー。明日槍かなー?と思ったけどよくよく見たら骨格とか瓜二つでもしかして、前に小耳に挟んだ妹さんかなーと」あ、鋭い。
「あとDNA鑑定したらバッチリ!」
よくわからないけど興味本位でして良いことではない気がする。
「で、どうされます?医者としては旦那様やご家族に相談した方がとも思いますが、身重の貴方を一人遠方に行かせたなんて知ったら怒り狂うとも」
「・・・・。」
確かにそうだ。それに相談できる家族は、
「夫は事情があって一緒には過ごせないのです。」
「旅の途中でして、なので海を渡って、遠方に行ってから身を置こうかと」「それはおよしなさい」
とても強い口調で遮る。
「私が相談する様に話したのはあくまで産みたいならの話です。それが出来ないなら、諦めなさい。」
「・・・何故?」
「血の巡りがとても悪いのです。命の保証が出来ませんしその状態で無理に働けば遠くないうち子を失うでしょう。」
頭から冷水を浴びせられた様な気がした。身体が冷たく血の気がさらに引いた