第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
遠い異国の国だ。大丈夫見つからない。唯の噂だ。
そんな風に自分に言い聞かせていた。身体が酷く重い歩く事も億劫だ。私を案じているのかアウラは背に乗るように鼻頭を私に押し付ける。
「海を渡るべきなのかな」
語学はジルに教わったし日常会話くらいなら大丈夫だろう。そうなったらこの子は誰に頼もうか。
「おまえ、一人で帰れる?」心配ではあるがそれが一番形跡を残さない。少し怒ったように鳴く。
とりあえず日も落ちて来てる宿に泊まろう。
そう思い、町のアーケード街を歩く
とても賑わっていて食べものもたくさん並んでいる。
「そこの綺麗な白馬を連れた綺麗なお嬢さん」
この近辺に白馬はいない。
「お上手ですね。」「いやいや、旅人かい?この国はどうだい?中々良い所だろ?」「そうですね。陽気で良い所ですね。」
「どうだい?お近づきのしるしに何か買ってかないか?今なら美人限定価格で安くしとくよ。」
「商売上手ですね。うーん。お世辞を言ってくれたお礼にそちらの果実を一つ買いますね。」
ウィスタリアに比べても果物の質も大きさも良い。しかも値段も標準価格も安い。
香りも
「うぐっ!?」
嘔気が押し寄せてきて慌てて口元を覆う。買いだ途端酷く鼻に着く匂い、血の気が全身から引き目の前が真っ暗になる。
「おい?!お嬢さん!!」
いけない、こんな場所で倒れたら、急いでこの場から離れないとしかし離れようする意思とは逆に身体は動かない。脚に力が入らずそのまま身体は舗装された道に倒れた。
目覚めて次に見たのは白い天井だ。鼻に着くのは消毒液の匂い。腕には細い管が刺さっていて管を辿ると不思議な形状の袋に入った液体が私の体に流れ込んでいる。
「気がついた?ステラ??」
驚いて声の方を見た。
名を呼ばれたのは何日ぶりだろう。この人に呼ばれたのはいつ以来だろう。父にそっくりの陽光に輝く稲穂の様な金髪。母譲りの深い青瞳は知的で勝気そうな雰囲気。
記憶に残る。負けず嫌いで強くて、そして優しい顔は歳を経てさらに聡明そうで自信に満ちた魅力的な美人に変わっていた。
「ルナ・・・?!」「コラっ!?ちょっと会わない間に少し生意気になったわね。お姉ちゃんと呼びなさい」
大好きな、優しい私の自慢の姉の笑顔があった。