第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
あの村は緑が豊かで長閑な良い場所だった。
ウィスタリアにはない植物は花屋の娘だった事もあり心が僅かながら踊った。
手慰みに作ったリースもポプリもとても喜んでくれ、嬉しくて作り方も教えると村の娘達は早速家の軒に飾り出した。
町で売ると評判も良いらしく。村の民芸品としてこれからは村の人助けとなる事だろう。
こうして何も言わず出て行ってしまうことがとても寂しくもあったが、心残りはない方が良い。
城下町というのはどの国でも賑わっている。
アルス国について知る為に城下に来たがウィスタリアにもシュタインにもない独自の文化と技術があった。それを民衆の暮らしの為だけに提供している事も好感を持てる。
たくさんの本や各領地の民芸品も多い。隣国からも僅かだが観光客もいるらしい。
「おい、知ってるか?何でも異国のプリンセスが行方不明だそうだぞ。」思わず、ドキリと心臓が脈打つ。
「何だ?視察か何かで逸れたのか?ウチの王様なんて毎月やらかすじゃないか」「それが、聞くも涙、語るも涙の話だなんだよ。」
「笑い話的な意味で?」
「悲劇だよ。何でも城下暮らしの不遇の姫君がお城に呼び戻され毎日習い事やマナーレッスンの毎日の上貴族連中に威張られる生活。」「はぁー、その姫さんは肝がちっせーな。返り討ちにしないなんざ」 「御心優しんだろ?そんな姫君に運命の出会いがあった隣国の国王様が一目で見初め、やがて恋仲になり、二人は結婚を約束したそうだ」「物語みたいだなー、にしても貴族やら王族って何でそう一目惚れからの結婚になるんだろうな。すぐに手を出してんのか?」「今、昼だぞー、飯時だぞー、公衆の面前でソレ禁句な。」
「で、推察するに婚約はしたが貴族連中が身分違いだ何だって文句言って姫さんは人知れない山か孤島に幽閉でもされたのか?もしくは死んでるかもな」「・・・・・お前に話す気が失せた。」
どうやら別の国の話らしい。この場は離れよう。
「そう言うなって、教えろよ」「たく、まぁ途中までは間違っちゃいないよ。その姫君が邪魔だと思っていた自国や隣国の官僚どもが不正を働いて姫を隣国からも自国の城からも追い出しちまったって話だ。城に召し上げられたから城下に戻る事も出来ずだと」
「可哀想に、つーか態々城下から呼び戻す位だからその国の王位これからどうするんだろ?」「ルナもう黙れ」