第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
日を追うごとに私の身体は心境とは裏腹に弱っていった。精神が休まらない為か慣れない外国の為なのか。
食欲もなく、身体が重い、熱も微熱ではあるがこのところ毎日続いている。
「いつまでも、ご厄介になるわけにいかないのに」
私が迷い込んだ森はこの国の住民以外が抜けることはほぼ無いと言われているそうだが、万が一という事もある。
それに、この村はお世辞にも豊かとは言えない貧しい村だ。
しかし、人は優しく何かと滋養のある食べ物を分けてくれ、
『古着で申し訳ないけど』と衣服まで提供してくれたのだ。
これ以上迷惑をかけたくは無い。
せめて、何か出来れば。とは思うが、
「おや、お嬢さん。大丈夫かい?」
「えぇ、長い間大変お世話になりました。
そろそろお暇させていただきます。」
「いく宛でもあるのかい?」
私はそぉっと首を振る。
「これ以上ご迷惑をおかけするのが心苦しいのです。お礼としてこの馬を差し上げたいとも思いましたがこの子は帰る場所のある借りもの、お渡し出来るのはこれだけですがお受け取り下さい。」
手慰めに花染めした布に刺繍を施していた織物。
この村の草木花は染物として非常に使いやすかった。
老婆は織物を手に取り刺繍をまじまじと眺めていた。
「この色はどうやって作ったんだい?」「この深い青は小高い丘の花を鮮やかな緋色は隅に生えていた草を使いました。」
「ちょっと、こっちに来てくれ」
少し強い力で引っ張られてついたのは村の広場。
老婆が号令をかけると村の若者や娘達が集まり、染物を見せてくれと頼まれた。
手近な草を集め煮詰め布を入れて水にさらす。
先程使っていた雑草と同じ形状にも拘らず、染めた布の色は鮮やかな黄色、高度や日差しによってどうやらこの草は染料としての色が変わるようだ。
「こりゃあ、たまげたあの雑草は取ってもすぐ生えてきて困っていたのにこんなに綺麗に染められるんだね。」
「いい色じゃないか、町で売れるよ。」
「お嬢さん、悪いんだがこの染物の作り方を教えておくれ」
「この町にはこれと言って町で売れるものがない、僅な家畜の乳や肉、森で狩る獣の肉や皮を売ることはあるが雀の涙ほども価値がない」「引き受けてくれるか?」
少しでもお役に立てるのなら、
「こんな若輩者の浅知恵で良ければ、喜んで」