第6章 5章 冒頭 運命の分かれ道
何処までも続く深い森の中に私はいた。
深い森にも拘らず、輝く光が森を明るく照らしている。
光で手元を照らし私は草を熱心に編んでいた。草編み何て子供の時以来だが器用に手が動く。
何故、自分はこんな事をしているのだろうか?
疑問が頭に過ると決まって白い狼が私の前に姿を現す。
あぁ、そうだ・・・。この狼の為に編んでいるのだ。
まるで昔見た絵本の内容ようだ。
魔女の呪いで姿を替えられてしまった王子の為に物言わぬ娘がイラクサを編む話。あのあと娘はどうしたのか思い出せない。
ここにくると辛い事や悲しいことが忘れられる・・・とても幸せなことの筈なのに・・・。
何故か心の大切なものが抜け落ちていく。そんな感覚に襲われた。
そもそも、なぜ私はこの狼と一緒にいるのだろう・・・。
誰かに似ているから?
誰に・・・?
・・・・・・・・・大切な人に?
大切な人って・・・?
・・・・・・・・・・・・・迎えに来てくれると約束した人
・・・・・・・・・・・・何処に??
・・・・・・・・わからない
・・・・・・・・・・・・・・・どんな人??
・・・・・・・・・・・・・・・・わからない
何故、あれ程恋しかったはずなのに・・・思い出せない。
どうして、思い出せないの?
会う資格がないから・・・。
私の所為であの人が傷ついたから・・・
謂れのない嫌疑にかけられてしまったから、私の所為だというのに助けるどころか・・・、
そうだ。私にはお会いする資格もまして、傍に置いていただく資格すら・・・
目から滴が生まれイラクサを編む指にかかる
痛みはなかった金属の冷たい質感に思わず目を向けようとした時
「・・・・・・・・!」
目が覚めた。
森の中ではなく古びた民家の一室。
ここは・・・、そうだ。一泊世話になることになった家だ。
まだ体が休まってないだろうと老婆が提供してくれたのだ。
祖国から離れる為、あの人に見つからないように遠くまで来たのだ。
大丈夫・・・まだ、覚えている。さっきのは夢だ。ただの夢・・・、
なのに、体を休めようと目を閉じる度体が重くなっていく、不安に駆られていく・・・。
不安を口にできる友人もなく、庇護してくれる家族もない。私はいま一人なのだ・・・。