第2章 考察と調査
ここはとある国の小さな村・・・小高い丘には色とりどりの花と神秘的な湖・・・。
村には村人たちが花を摘み作ったドライフラワーが窓辺につるされている。
元々は作物を育て牛を育てることで村の生計をみんなで支えていたこの村・・・。
とある人がこの村の近くの森で群生する植物が薬効、香り、染色として優れたものだとわかり、それからその技術を村人に教え今では、国一番花が美しい療養地としてのどかながらにぎわっていた。
そんな一角にポツンと建っている城下に比べれば小さな宿屋・・・。
しかし建てられて新しいのか外壁は白く赤レンガの屋根は綺麗な茜色・・・。
窓辺には黄色と薄紅色さまざまな色の花のブーケが吊るされていて素朴で馨しい香りがする。
室内から一定のリズムでカタン、コトン・・・機織りの音が聞こえる。
「そろそろ、着く頃かねぇ~・・。」
恰幅のいいご婦人が真っ白な布に刺繍を施しながら話し出す。時計は12時を回っている。
「さぁ、どうでしょう?」
この村の小さな可愛い愛しい宝物が村を離れたのは5日前の早朝だった。
日が昇り始めたばかりだったのに村の人全員がタカラモノの旅立ちを祝福した。
何事もなければすでに目的地についている。そう思い手紙をとある家に届けた。
「やっぱり寂しいねぇ」
この村には子供は少なく10人程、旅立ったのはその中の一人で一番やんちゃな子だった。
木の実を取るため木登りして落ちたり、湖に落ちたり、毎日外で走り回っていた。あの元気な声が今は聞こえない・・・。
でも、
「あの子の・・・幸せの為ですから・・。」
毎日めまぐるしくて、忙しくて、悲しくて、楽しくて・・・とても幸せで・・・・
いつまでもずっと一緒にいたかった・・けど、そういう訳にはいかない・・・。
あの子は高く飛べる・・・遠くまで走れる・・・私に縛ってはいけない・・・大切な・・・本当に大切な
「そろそろ、時間だね。ゆっくり休むんだよ」「はい」
昼の暖かな日に包まれてキラキラと白い髪が金の色味を帯びる。ひどく痩せた女の首には繊細な装飾の青い石がぶら下がっていた。
黄金色の瞳に涙があふれ流れ落ちる。唇が開くが音にならず、代わりに青い石に祈りを捧げるように薄く柔かな唇を当てた。