第1章 序章
「いたか!!!」「いや、ダメだ!!また逃げられちまった」
「逃がすな!!!あいつは上玉だ!!」
「何としてでも、とっ捕まえるぞ!!!」
「久々の獲物の上、いい女だ。せいぜい愉しませてもらおう」
噂はしょせん噂だった・・・・。
私がこの森で見たのは野盗だった・・・。
それも奴隷商人をしている・・・。
恐怖で体が固まるより先に馬を走らせることが出来た自分を褒めてやりたい・・・・。
しかし相手もせっかく見つけた商品逃す気はないらしくかれこれ2日間追いかけっこに興じていた。
飲まず食わずの上休まずで馬もそろそろ限界だった。
「・・・・・・っ」
手綱を緩めた・・・・馬はこちらを振り返る。
「もういいありがとう。私に付き合う必要ないわ」
今までずっと走ってくれた・・・。
国を離れ・・・何日も・・・・
「お城でも、お城を離れてからも今までよく走ってくれたね」
優しく労わる様に首を撫でてやる。
国を離れ何日もこんなに長く走っていたのに女はほとんど疲れていない・・・ひとえに馬が彼女を気遣って走っていたおかげだ。
「あなたならこの森を抜けられる。あの国に帰れる
だから・・・・」
私は帰ることが出来ない。もっと早くにこの子を手放すべきだったのだ・・・そうすればこんな危ない目に合わせることがなかった。
この子に乗る資格さえ失っていたのに・・・
「さようなら」
鐙から足を外そうとしたとき馬は甲高いいなき声をあげた。
天に轟くようなその声を野盗たちが聞き逃すことはなかった急いでその場所に向かうが馬も女の姿もどこにもなかった。
その後森を探すが見つけることが出来なかった。