第5章 番外編 小さな王様の観察日記
(王様の相棒の場合)
ルプスが真夜中に悪漢に襲われ、ビョーキになってしまった。
一時はどうなる事かと、思ったがルプスの体調は良くなりつつある。ココは一つやつがれが美味しいご馳走を用意してやろう。
ルプスは野うさぎのスープが好きだった筈だ。母君の得意料理の一つで普段チョーダイすれば大概分けてくれるのだがアレだけは分けてくれた試しがない。やつがれも新鮮なウサギ肉は好きだ。
早速野原に行ってくるとしよう。
「ん?レグルス??お散歩に行きたいの?」
違う、狩に行くのだ。もう暫く休んでいると良い。やつがれが新鮮なウサギを取ってくるぞ
「そっちの扉は開けないで、窓から出てね」
またか、オウチにいた時は玄関から入る様にと教わったのにここに来るようになってからあっちの扉を開けたがらない。
しかも、時折扉から音がすると身を竦ませる。
やつがれはこの表情を知っている。オオカミが来た時の顔だ。とても苦手なモノがいるのだ、しょうがない。やつがれが退治してやろう。
まずは敵を知るべきだ。窓から覗いてみよう。中はやつがれの眼の色と深い青を基調とした部屋でまるで星空を見ているようだ。
その中で少し大きめの鳥かごで悠然と佇むモノがいる。
あれは
『なんだ、レグルスか』
この国の王様に飼われているスピネル様だ。やつがれと同色の体毛と瞳をしていて伝書鳥でもある。
『様』付しているのは彼が国王様に掛け合ってくれなかったらルプスを助けられなかったから、命の恩人という奴だ。
『ルプスの容態はどうだ?昨晩は熱が上がったそうだな?ゼノも心配していた』そしてルプスをとても心配しているがあまり部屋に近づきたがらない。
まだ微熱があるものの元気でした快気祝いに野兎を持ってこようとしているところです。
やつがれは狩りの名手なのです。
『野兎か・・・よい狩場を知っている案内しよう』
おぉ、忝い。羽音も無く優雅に飛ぶ様は優美だ。
羽音を立てず羽ばたく事もなく飛ぶ事はやつがれにはとても真似できない。
『この辺りには毒ヘビも多いから十分気をつけろ』
この地での生活も長い為か色んな事を知っている。
スピネル様はアニサマの様だ。
とっても、優しいのだ。