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[イケメン王宮]グッバイ!racrimosa

第4章 導きの星は誰を照らす


音を立てないように扉を開けると、小さな影が蹲る様にして肩を震わせていた。
目元を小さな手で必死に拭っているも、鼻をすする音が一定の間隔で聞こえ大粒の涙がポロポロと星屑の様に溢れ落ちる。

白鷲が不安げに傍らでか細い声で鳴いている。
こういう場合どうするべきなのだ?自分はどうしていたか?手を顎に添え考えるも答えは出てこない。
そもそも、不安になる事や泣いた記憶がない。王族たる者些細な事で動じてはならないと、教えられ、また、国を背負うという重責の中泣いてる暇などなかった。
しかし、
『無理、なさらないでください。辛い時は如何か、』
泣いても良いのだ。と
愛しい妻はそう言っていた。アレはいつの頃だろう。彼女を最後に見た日だ。
父が亡くなり、それでも泣かずにいた自分にそう言って抱き締めてくれた。結局泣く事は出来なかったものの空虚な心が埋まった様な感覚がした。
彼女がしてくれた事を思い返す様に優しく小さな体を抱き上げる。
濡れた頬はやや冷たく、体も夜風に当たっていたのか冷えていた。目は真っ赤になっている長い時間泣いていたのだろう。
自分の体温を分け与える様に頬を押し当ててやる。頬に伝う温もりが自分のなのか子供のものなのかわからない。

「っ・・・ぅ・・ぁ・・ひっく、」
喉が枯れているのか音にならない嗚咽となり溢れ落ちる。その顔はまるで世界に一人だけ取り残されてしまったかの様に不安と哀しさが入り混じっていた。
まるで自分の様だ。そう思いながら、感じながら、

「ルプス、大丈夫だ。」

何も聞かずただ抱き締めていた。夢の中であった妻にした様に、思い出の中の愛しい人にしてもらった様に優しく守る様に。

「・・・・さ、ま」

掠れた声が聞こえる。何と言ったのかわからなかったがとても心地良かった。
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