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[イケメン王宮]グッバイ!racrimosa

第4章 導きの星は誰を照らす


『ゼノ様・・・、如何かなさいましたか?とても嬉しそうです。』
最愛の人の声がした。小鳥の囀りのような春風の様に暖かく優しい声。
「あぁ、とても嬉しいことがあった。」『まぁ、どんな事ですか?』
迎え入れる様に腕を広げれば腕を取り寝台の傍に腰を下ろす。けして招かれた腕の中に入らない彼女を恨めしくも思いながら腕をか細い腰に回し抱き寄せる。抵抗するそぶりはない。

「お前にそっくりな子がこの城に来た。」
これは夢なのだろう。しかし伝えずにはいられない。この胸の喜びを何よりも愛しい人に。

「月明かりに照らされた黒髪は烏の様に艶やかで、」
長い髪を優しく梳り、唇を落とすと芳しい花の香り。
「暖かな頬は星明かりを受けて彩けき輝く白」
滑らかな頬は暖かく陶器の様に触り心地が良い。
「声は柔らかく花が芽吹く様に」

「目尻は優しく、その眼差しは聡明な光りを帯び、色は・・・

『日の出を臨む夜の帳』
ゼノの言葉を遮る様に可憐な声が紡がれる。まるでその子供を知っているかの様に夢の中の彼女が知るはずのない事なのに。

『とても賢く、優しく、泣き虫だけどけして弱音を吐かない強い子なんです』
これは夢の筈なのに、何故?こんなにも愛しいひとの肌が鮮明に感じるのだろう。離れないように強く抱き締めているのに何故こうも不安なのだろう。

『貴方の傍に居られればと星に、願って』傍に居ればいい。お前の居場所はずっとここだ。
強く抱いていたはずの愛しい人の体の感触はない。暗闇の向こうへと飲み込まれて行く

「ステラ!!何処に行く?!」

『ゼノ様どうか、あの子をお願いします。そしてどうか私の事は・・・』
それ以上は聞きたくないそう思っても口の動きが鮮明で声を拾ってしまう。目を閉じても紡がれた言葉が頭で輪唱する。

わ、す、れ、て、く、だ、さ、い


「!?」
再び目を開けた先は見慣れた天井。夢であった事に安堵すると同時に体の芯が冷えて行くのを感じる。
今まで見た中でも最悪の夢だ。
「必ず見つけ出す。俺の王妃はお前一人だ。」
言葉にしながらも待つしか出来ない身が何と口惜しい事だろう。全てを任せ探しに行く事を己が課した王としての責務が許さない。

ふと、か細い泣き声が隣の部屋から響いていた事に気づきゆっくり部屋へと近づく。
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