第4章 導きの星は誰を照らす
剣を基本とするシュタインの騎士達にとって弓はあまり馴染みのないものと言っても、行事等で用いられるため、必須項目でもあったが
「・・・・見事ですね」
盗人の腕前はなかなかのものであった。正中線を外していても的を射られており、次の動作も中々に早い・・・。
9本中3本は的の中央に刺さっていた
しかし、ルプスはその上を行く。
矢が的を射たかと思えば、次の矢を番えておりそれを正中線へと当てる。最初の矢もそうだが、的の中央を見事に射抜いていた。
全部で9本射かけた矢のうち、的の中央からずれたのはわずか2本だった。
野次馬をしていた民衆の歓声に広場がざわつく。
「まぁ、あれでも調子悪い方だわ。最近は弓をやってなかっただろうし、狩猟をしているアルスの国じゃあ的に当てるなんて当たり前の事だし
あたしがわざわざ、盗人相手に情け懸けるわけないじゃない」
「俺の勝ち。この荷物は返してもらうよ。」
そういって成り行きを見ていた盗難にあった人に返す。
あたりは夕焼けが差し込み始めている。この日一日はあっという間に過ぎてしまった。
「視察・・・全然できませんでしたね。」
「いや、貴重なものを見れた。今後、城下の警備も強化しよう」
「それがよろしいかと。しかし、驚くべき技術ですね」
勉学に置いても、医療に置いてもかの国の発展は目に見えて進んでいるらしい。
その中で子供として扱われず大人たちを圧倒することで己を守ってきた子供。並々ならぬ努力の結果であろう。
「母様!もうすぐパレードが始まるんだって!!一緒に踊ろうよ!!」
「この辺のダンスを知らないだろ?やめとけ恥をかくだけだ・・・って待てよ。いっそ二人で踊った方が見世物として評価されるかも・・・。」
考え込むルナを引っ張り踊りを披露する。
踊りはこの国で言うところの『ギャロップ』によく似ている。軽快なリズムの曲に合わせ、飛び跳ねるようにステップを踏み大地を力強く蹴り、高速で回る。座位から飛び立ち上がったりと負担が掛そうではあるが雄々しく美しい。
飛んだり跳ねたりする仕草はまるで獣の子供が燥いでいるように心が温かくなる。
異国の刺繍が施された衣装がターンと共に翻るさまはとても美しい
「なんだか、昔、妹達と踊った時の事を思い出すなぁ・・・。」