第4章 導きの星は誰を照らす
「うわぁぁああーーー!?」
悲鳴をあげたのはルナだった。そして、すりこぎを掴み、来客に投げつけた。
軽やかに避ける。ニコニコと笑ってこちらに近づいて来る。
テーブルを持ち上げぶん投げ、それも軽やかに避ける。ニコニコと笑って、
「何で、何で!?何でよりにもよってあんたが!?」
「んー、わたしを呼んでる。いとしいヴィーナスの声がしたから。」
無骨な姿に似合わぬ詩人的な言葉に背筋が凍りつく
「仕事はどうした!?」「やってるよー。お使いしに来たんだ偉いだろー」
間の抜けた声に毒気を抜かれるが騙されてはいけない。あれは悪魔の使いだ。あいつのせいで何度酷い目にあったことか。
「近づくな。こっち来るな、半径3キロ以内入って来るな!」
「半径3キロってそれじゃあお店に入らないじゃないかー。
遠路はるばるこうして荷物渡しに来たんだから多少は労ってよ」
二人の距離がどんどん近づいて来る。躙り寄る姿はまさに追い詰められた鼠を狩る猫の様。
「会いたかったよ。僕の愛しのアルテミス」
あ、ヤバイ吐きそう・・・。
「触るな!?変態!!!!」頬を思いっきり撲りつけ様とした手を包み込んで手の甲に唇を落す。実に優雅な仕草だか、鳥肌が全身を覆う。
来訪者の目が俺に向いた。瞬間に出口に向かって走るが
ヴヴゥーーーー・・・
無数の狼に行く手を阻まれてしまう。此方を見る狼はシュタイン城であったルークと違って大きい。
身がすくむ。
「う、うわぁ!?ひっ!?ヴぅー・・。ヒギャァ!?」
飛び掛かられ、ガタガタと震える身体。御構い無しに近づいて来る狼。
「や、ヤメロ!!!クンナ!!!レグルス!!!早く、早くこいつらドカシテ!!!」
「何だよ愛想ないなぁせっかく、晴れ姿見に来てやったのに。なー」
狼達をどかしてもらい、高いところに避難した。
「お前、ルプスが狼ダメなの解っていて嗾けんの辞めたら?」
「えぇ~、こいつらに慣れてもらおうとしただけだよ」
「何であなたがココにいるんですか??」
「余所者だろうと。お前らはアルスの臣下だ。監査員がココに居ちゃいけないって理由はないだろ」
とても冷たい狼の様な目でこちらを見ていた。