第4章 導きの星は誰を照らす
しかし、本当に賑やかだ。そして、何故かチラチラと此方を伺う人々。
「あの、お忍びですよね?」「もっちろん!じゃなきゃ視察にならないよ。」「この様に簡素な服を着ているだろう。」
チラリと国王様を見るが微かに頷く。
「さっきから視線が多いのですが、バレてませんか?」
普通お忍びってもう少し変装したり、目立たない様にしたりするものだと思うのだが、先ほどの漫才の様な相棒とのやり取りでそれなりに目立ってしまったにしても視線の数が多過ぎる気が・・・。
「気のせい気のせい」「恐らく視線の大半はお前と連れている鳥が原因だ。」そんなに俺達目立っていたの。これでは視察のご迷惑に
「あら、坊ちゃん!綺麗な鳥を連れているじゃない」「へぇー珍しい、こりゃあ見事な白い鳥だな」「ありがとうございます。」
道行く人に褒められ満更でもない様子の相棒。
「この国では鷹や鷲は珍しいのだ」あぁそうなんだ。
「アルスの国では鷹狩りが盛んなので、多いんですよ。狼や珍しいのだと虎なんかもいますね。」確かアルスの王妃様が虎を飼っていたような?
「あら、じゃあその子も鷹狩りの子なの小さいのに凄いのね」
「まだまだですよ。なっ!」「この街のバザー楽しんでいってね。色んなお店が出店するから」
「治安維持とか大変そうですね。」「シュタイン城の騎士様やフレイ地区の夜警団が毎年警護に当たってくれているけど色んな人がいるからね。」
「坊ちゃん小さいし綺麗な顔してんだから、捕まらない様にお父さんの手握ってるんだぞ」そう言って国王様の方を見るおじさま。
「あ、あの申し訳ありませんが、この人は俺の・・・!」父ではありません。そう言おうとしたが遮られてしまった。優しく自分の手を包み込んでくれる手によって
「忠告感謝しよう。では、引き続きバザーを観に行くか」
ラフな格好をしていても何処か気品があって浮世離れしてる。とか、村のおじさん達より若いのにとても貫禄がある。とか、自称村一番のイケメンを名乗る兄様達より格好良い。とか
他にも色々思う事はあるだろうと思うのに、
この人がお父さんなら良いのにと心の何処かで思えてしまう。
握られた手に力を込めると答える様に少し力強く握り返してくれる優しくて大きくて骨ばった手を離さずにいた。