第4章 導きの星は誰を照らす
頭を撫でているうちに寝息を立ててしまった少年を見つめる。
こんなにあっという間に寝てしまうとは・・・子供は寝つきが良いという事は本で読んだことはあったが、本当だったのだな。
普段、起きているときの印象とは違い、あどけなく年相応に見えるうえ、見れば見る程愛しい人にそっくりであった。
陶器の様に滑らかで白い肌も・・・・長い睫毛も・・・頬を撫でた時に伝わる温もりも。
あの夜、噴水傍で倒れていた彼を抱き上げた時、とても冷たく、水に濡れた髪は艶めきを増していて見紛うた程だった。
そして、心臓が急激に冷えた・・・。
また、失うのか・・・・。と、
医師が帰られた後もアルバートやユーリがせめて彼を自室へ戻すように促されたが、とても承諾できなかった。
目を離した隙に霧の様に音もなく前触れもなく消えてしまいそうで・・・。
こうして温もりが戻ってようやく離れる事が出来たのだ。
優しく少年を抱き上げた・・・。
「ピュイ!」白い鷲が抗議するように鳴く
「隣の部屋に移すだけだ・・・心配ない。次起きた時に飲めるように薬を置いてやれ」
白い鷲はこちらを見上げる。とても静かで神秘的な金色の瞳は何かを見定めようとしている。
「ホーーホーーー」
中庭に出ていたスピネルが戻って来た。白い鷲に何か諭すように声をかけている。
すると白い鷲は隣の部屋のテーブルの上へと向かい足につけられていた丸薬状のものを置いた。
そしてこちらを睨みつけるように見ている。
少年を真っ白な寝台に乗せ、掛布をかけてやると枕元で丸まって目を閉じる。
こうしてみるとまるで親子のようにも見えた。
起こさないようにそっと足音を潜ませ、扉を音をたてないようにして閉め、執務へと向かった。