第4章 導きの星は誰を照らす
扉の向こうから顔を覗かせたのはこの国の王だった。
見覚えがあると思ったらここは彼の私室だ。
「・・・申し訳ありませんでした。」
ルナに促されるまま寝てしまったこの部屋で、という事は彼は別の場所で寝たという事だ。否、寝れなかったかもしれない。
とにかく業務に戻らねば、そう思ったが、国王はこちらに近寄り、あろうことか自分に膝を折り片膝を付いた。
そして、
「あ、あの・・・。」「まだ熱いな。」
眉を寄せ、そのまま俺を抱き上げ、ベッドに降ろす。
「もう少し休むといい・・・。」
「は、はぁ・・・、!!?い、いえ・・・あの・・・、」
優しく頭を撫でられるものだから頷きかけたが良くないだろう。
一介の執事が・・いや執事ですらない見習いの分際で国王の私室をお借りするなんてどんだけ不敬で礼儀知らずだよ。
「だ、大丈夫ですよ。寝起きで少しふらついただけでもうほんと・・午後の業務だって完璧に・・」
「無理はするな・・。」
酷く、悲しげ声に言葉が止まる。
「お前はウィスタリアからこの国に勉学に来た国賓だ。無理をする必要はない。
遠く離れたお前の家族もお前が無理をすれば悲しむだろう・・・。
俺はルナ殿にお前の保護者によろしく頼むと託されたのだ、辛いときは我慢する必要はない」
確かに、ここで不祥事を起こしてしまえばウィスタリアに迷惑をかけてしまうし、このまま無理してしまうと診察に来た保護者に国王は無用な因縁をつけられそうだ。
「じゃあ、せめて部屋に戻らせてください。一介の執事がいつまでも国王の部屋のベッドを占拠する訳にはいきません。
自分の部屋でちゃんと休みます。」
「お前の白鷲はそうは思っていないようだが、」
俺の頭に腰を落ち着けるレグルス、重みに耐えきれず、枕に頭を預ける状態になる・・・。
「でも、・・・。」
ここを使うとなると同僚たちのいびりとかもヒートアップしそうだし、チラリと眺めた鳥かごは今は空だが・・・。
「では、隣の部屋を使うといい」
指示した部屋は王妃様のお部屋だ。
「あそこならば掃除以外で人が入ることはない。あの部屋の掃除をお前に任せる。
それに・・・お前が使うのであれば、妻も喜ぶだろう」
優しく髪を撫でられ、意識が眠りへといざなわれる。