第4章 導きの星は誰を照らす
「やんなっちゃうな~」
掃除をしながらそう呟く。彼が通った道は床はすでに美しく磨かれてあるものの先はまだ汚れていては手が見えない。
事の始まりは執務室を出てすぐに起こった。
「おぉー、おぉー。新入り殿は早速陛下たちに取り入ってらっしゃる。」
「卑しい身の上で、図々しいにも程があるな」
「官僚たちですら一蹴される陛下が何故お前などに・・」
悪意に満ちた言葉が耳に入り込む、そ知らぬふりをして素通りしようにも・・・・
足を駆けられ、転ばされたり、ど突かれたり、生傷が絶えない・・・。深いため息をつくと
「おやおや、大丈夫かな?」
好々爺といった態で駆け寄る官僚、見覚えがある自身の孫だか、遠縁の子を側女にと陛下に話しかけていた人だ。
「平気です。国王陛下でしたら執務室にいらっしゃいますのでそちらに・・・」
「いや、私は貴方に用があるのです。例の件について」
この顔ははたから見ると陛下にそっくりなのだそうだ。
そして、官僚たちは俺を利用したいのだろう。その様子がありありと判る。
「申し訳ございませんが、私の肉親はたった一人だけです。後にも先にもたった一人だけです。養子だの義父だのそんなものも必要ありませんので・・・お引き取りを・・。」
「いや、しかし、国を思えば・・・」
「では、陛下にそのように言えばよろしいのでは、きっと烈火のごとく怒られますよね。だって、貴方たちのしていることは自己顕示欲を示したいだけの偽善でしかないですもんね・・・。」
官僚たちは俺を利用したい、同僚たちは、他国の人間が陛下の傍にいることが気にくわない。
だから徒党を組み俺を蹴落としたい。
「おい、新入りここ片付けとけ」「はーい」
顔に笑顔を張り付け掃除に入る。
ご丁寧に床を泥だらけにして・・・。こんな事する暇があるなら紅茶淹れる腕でも剣振る腕でも磨けばいいのに・・・。
ため息交じりに掃除に取り掛かる。手伝ってくれる人は誰もいない、頼りたいとも思えない。頼る人もいない・・・。
「俺、いつまでここにいるんだろう・・・。」
何処に行けばいいだろう?国王陛下は何の為に俺を呼んだのだろう・・・?
薄汚れた道が続く・・・まるで自分の心が反映されてるみたいだ。