第4章 導きの星は誰を照らす
「ご、御無礼を働き大変申し訳ありませんでした。」「いや、気にする事はない。」
先程までのパニックは何だったのかと思う位年に似合わない冷静な態度でしっかりしたお辞儀だった。しかし、閉じられた私室へと続く扉をチラチラと見ている。余程スピネルが苦手の様だ。
「動物は苦手か?」
「いえ、寧ろ大好きな分類です。ホントです。」
しかし、それ以上何も言わなかった。不愉快に思わせない様に言葉を選んでいるのか又は、どの様に説明すれば良いのか自身でもわからないと言った様子だ。
考え事をしながらも床磨きやベッドメイキングを行なっている辺り器用である。
この部屋に足を踏み入れたのは本当に久し振りだ。
「あの、これは・・・?」
手にしていたのは見覚えある。
ネイビーの生地にグリッターやビジューをふんだんに使った美しくも気品がある靴。
床に 不自然に置かれていたソレに興味を示す。
「俺が贈ったものだ。」あの舞踏会の日に・・・
これを身につけている間、俺が傍にいる事を思い出して欲しい。
靴は数年経ってしまった時の流れを感じさせないくらい変わらない煌めきを放っていた。
あの日、権謀渦巻く会場の中、気丈に振る舞い逆境さえも跳ね除けていた彼女は誰よりも美しく、数多の煌めく星よりも輝いていた。
「すまないが、この靴は閉まってくれ」
彼女に何の落ち度はなかったのに謀略を許してしまった。
後のことは任せろ。等とどの口が言うのだろう守れず、未だ見つかる事の出来ない自分を神は嘲笑っている。祈る度にそう感じる。この靴を見る度そう思えてしまう。見るのが今は辛い。
「では、箱に入れておきましょう。」振り返ると子供は笑った。
「プリンセスが見つかった時、直ぐに履かせて差し上げられる様に、ウィスタリアのプリンセスは庶民が偶然選ばれたと聞きました。おとぎ話のシンデレラみたいに」優しく微笑む
「なので、プリンセスに会ったら今度はちゃんと国王陛下が履かせてあげて下さい。おとぎ話の王子様みたいに解けない魔法をかけて差し上げて、あ!贈り物だから花を敷き詰めましょう。魔法の靴みたいに見えるでしょ?」無邪気に笑う少年は活けられた花を箱の中に敷き詰め靴を乗せる。
「・・・・美しいな」花に覆われた靴は其れこそ魔法にかかった様に綺麗に見えた。