第4章 導きの星は誰を照らす
「おっはよ~、昨日は眠れた??」「一度悲鳴のような声が聞こえたが」
「え、えぇ・・・まぁ」
嘘である。何度もあのスピネルの顔がグルグル回っている夢を見て、最後はレグルスまで首を回し始めて思わず悲鳴を上げた。
結局眠れなかった。
これから国王陛下の部屋に行かないといけない・・・怖い、めっちゃヤダ・・・。
「どうかしたの?」「具合でも悪いのか」
『ゼノ様の部屋にいるスピネルが怖くて入れません』
「・・・いいえ」
なんて言えるわけがない・・・恐怖を飲み込み笑顔を作った。
王族の専属執事という事もあって、紅茶の入れ方などもとても優雅で香りもいい・・・。
「ゼノ様は香りがよくて、少し渋みがある紅茶が好きなんだ。ヌワラ・エリアとかよく飲んでる。
プリンセスは特に好みなかったけど薄めの味が好きだった。あっ!ディンブラはよく飲んでたかな」
「コーヒーとか好きそうですね国王陛下」
「コーヒー??」
「えっと、南国で原産されている特殊な豆を粉末にして飲む飲料です。この辺では普及してないんですね」
母もあまり馴染みがなかったらしく最初戸惑っていたが、薬師はコーヒー派で淹れ方も拘っていたのでよく飲むようになった・・。
「そういえば、里帰りした時は飲まなかったな・・・。」
思い出したら飲みたくなってきた。
シュタインにあるルナの店に今度行ってみようかな・・。
「失礼します。」
そう言って入るとすでに身支度を済ませた後だったのかこの城に来た時と変わらない服に身を包んでいた。
私室は青と金を基調とした豪華で品の良い調度品。部屋の奥にもう一つ扉があるけど何処に繋がっているのだろう。
と考えながら・・・。目線をずらして
「・・・ホー」「・・・・。」
目があってしまった・・・。
鳥かごに入れられているが不機嫌ではなさそうだ・・・レグルスと大違いだな・・・。
思わずアルバートさんの後ろに隠れてしまう。誰も気づいていないようだ。
今日のスケジュールをアルバートさんが確認し国王様がそれに相槌を打つ紅茶を飲む仕草も実に優雅だ。
「わかった。では執務室に向かう。ユーリ、城の案内をまかせる」「はーい」「ありがとうございま・・す。」
少しだけ国王陛下は笑みを浮かべる・・・背後でスピネルがまた首を回してた。