第4章 導きの星は誰を照らす
あの後、レグルスを探しに、城下を巡って、散々走り回った。
旅の疲れもありウィスタリア城に戻ったのは翌日だった。
そして
「シュタインに・・・ですか?」
「うん。国王陛下であるゼノ様がぜひに、と」
綺麗で読みやすい格式ばった字で書かれた手紙にはシュタイン城の就業規則が書かれていた。
「まだ俺一応見習いの立場ですよね?」
試用期間ともいえる3ヶ月は過ぎたが、年齢に関して考慮したうえまだ見習いという立場だ。
どんなに優秀でも、年若いという理由で他国への付添はまだ許されていない。
そんなまだ中途半端な人間を他国にしかも大国に送っていいものなのか・・・。
「確かにそうだね。でも、執事としての業務を教えるには俺たちじゃ無理がある。」
「ハワード邸の執事に教授するという手もあるけど、あちらにはユーリがいるから。」
「彼は舞踏会で紹介した通り、今はシュタインの騎士ですが、ここでプリンセスの専属執事を務めた人です。
執事としての心構えや仕事を見るのにここまで良い師はいないんですよ。」
初対面と言い、舞踏会の印象と言いイメージが付かないが、今この城に執事としての業務を教えてくれる人がいないのは事実。
今までは作法はともかく、銀器の管理、食事、紅茶の入れ方は味や厨房に入って入れ方を習ったり自己流が今の状況だ。もともとアルスで習っていたがあの国はあんまり銀食器を使うことがない。曰く
『銀器は見る分には綺麗だが、使い勝手が悪い上、飯がまずくなる』
との事で王宮では陶器や漆器、木器が多い。特に木器は高温多湿に強い高級な木を使い精巧な透かし彫りを施したりしていて作るのには時間がかかるし美しい。長年使って焦げがついたものも逆に手触りや温もりが増しとても味わい深いものになる。
とまあここに来るまでそれほど縁がなく磨きも管理も自己流だったのだ。及第点は貰っているが、ハワード邸の執事の磨いた銀器と比べるとくすんで見える。
あっちにどんな真意があるか知らないがいい機会であるのは確かだ・・・。
返事は決まった。