第4章 導きの星は誰を照らす
森に入ってどれ位経っただろう?結構過ぎた筈だ。
この森は不思議だ、いつも同じ場所を通っている筈なのに違う道に出る時がある。不安で手綱を握ると僕を乗せていた白い馬が身じろぎする。
「ご、ごめんなさい。アウラが道に迷う訳ないもんね。」
動物というのは不思議だ。人間では見えない何かを見ている様な気がする。野生の勘というものなのだろうか?
「ウィスタリアの人が言うようにははさま、本当にプリンセスなのかな?」だとしたら、自分は、
「シュタイン国王と僕そんなに似てるかなぁ。」
母は以前言っていたのだ。会えばきっと好きになるとしかし、今思い返して見ても、好きとかそう言った感情は全くなかった。
それに、彼方も自分をなんとも思っていないだろう。それに向こうが親密に接してきても困る。
父親という存在に憧れてはいた。周りにいた同じ位の子供が両親に甘える事が出来る。恐ろしい狼すら子供に優しく愛情深く接していた。 なのに、自分にはいない。母がありったけの愛情を自分にくれているのは分かる。しかし、ふとした時とても寂しくて不安になる。 母が発作で倒れた時、真夜中に目がさめる時。同じ位の子が父親と遊んでる時。
「そう思うのは当たり前だ。」村の皆はそう言ってくれる。
しかし、ならば何故自分にはそれがいないのか?問いかけても何の答えのない虚しさ。
「こんな絵描いてもやっぱり意味なんてない。」
ロベールさんから貰ったスケッチブックから切り取って描かれた。自分と母と黒く塗り潰した人影。父親が誰なのか、どんな人かも分からず自分の顔に似た人物を描こうとしてやっぱり描かなかった。
自分には手に入らないものなのだと思い知らされた。
それでも捨てる事ができなくて、母に見せる事が出来ず持ち出すしかなかった。
「俺はどうしたいのかな」
このまま、ウィスタリアに行くべきなのか。母の元に帰った方が良いのではないだろうか?
あの場所は嫌いだ。城下に住む人は好きだし会いたい。
でも、詮索され、自分だって良く分からないのに下手に勘繰られ、扱われるのは不愉快だった。
アウラは怒った様に足で地面を強く蹴った。
此方を見る目は少し不機嫌だ。
「ごめん、考えるより行動だよね。行くよ。それで嫌になったら戻ればいいよね」
優しく頬を寄せ、少し腹を蹴ると森を風の様に走った。