第4章 導きの星は誰を照らす
明日、旅立つ俺の為に、宴会を開いてくれることになった。
好物の羊の香草焼きに香味野菜たっぷりのミネストローネ、ハープたっぷりのクルミパン、野兎のスープや串揚げ。
「明日は何時に旅立つの?」「日の出と一緒に森を抜けようと思ってるから」「一人で大丈夫か??」「うん!護身用に弓も棍も持っていくし、こんなガキ捕まえる程盗賊も暇じゃないでしょ?」「ちげぇねぇ」「でも、母御には言うなよ。心配する。」
森に入るというと母はとても心配した。
以前迷子になった事もあるうえ、野盗が出る事を案じて・・・しかし、妙だ。
この森はアルス国以外の人間はめったに入らないのになぜ、そんなものを心配してるのか・・・・?
「俺の留守中母を頼みます。」「あぁ、大丈夫だ。母御はあれでしっかり者だ。」「ところで女将さんは?」
「明日の準備をしてくれてます・・。」
こういう時こそ傍にいてほしいと思うのだが、どんなに休みの日は傍にいてくれても、旅立ちの前日と朝はけして一緒には居てくれない・・・。
「寂しいのを隠しているんだな」「涙もろいからな」
「食事だけ渡しに行ってきます。」そう言って家へと向かう。
薬師の家の傍の馬小屋。アウラも今日はなんだか落ち着かない・・・。首のあたりを叩いてやる。
ははさまの部屋へと急ぐ
『白い月の様な 森のオオカミに
私は願う 恋しい人に会いたいと
私の黒い髪を お前にあげる
そうして 私は銀の髪になる 恋しい人にはまだ会えず。
金の星を持つ 森のオオカミに
私は願う 愛しい人に会いたいと
私の眼を お前にあげる
こうして 私の眼は金色に それでも愛しい人にまだ会えず。
愛しい人に愛でられた 私は何処にもいない。』
悲しい歌が聞こえる・・・。
「ははさま・・・。」「あぁ、ごめんね。迎えに来てくれたの?」「・・・うん」
悲しげな母を抱きしめた。優しく僕の頭を撫でる。
「明日は早いからあまり夜更かししてはダメよ。お仕事の時もね」
「・・・うん」「風邪を引いてはダメよ」「うん」
「みんなと仲良くね」「うん」
「それから・・・・」
頬に冷たい涙が零れる見上げれば、母の瞳からポロポロと涙が零れる・・。
金色の眼は月明りがない所為か暗く、茶色に見えた。
俺は見えないふりをして母に抱き着いた。