第4章 導きの星は誰を照らす
ルプスに案内される村の風景はとても美しかった。
陽光を受ける葡萄棚、放牧へと出す牛・・・長老の家の前で寝そべる狼、糸をつむぐ女達、染物を水で洗う川・・・。
スケッチブックがデッサンで埋め尽くされる。
中でも、
「レグルス!!行って!!」
ルプスの姿が多くスケッチブックの中で描かれた。
自由に村を駆ける姿は狼の様であり、鳥の様でもあった。
年相応に村の人間たちにあいさつする笑顔。
彼がいるだけで、村を歩くのに大分助かっている。
村の人間は彼を自分の息子のようにかわいがっている。
「この辺は、子が少ないからな。小さい間はいいが、成長すれば王都や大きな町にいた方が何かと便利だし、安全だ。」
「安全・・・ですか」「いろいろと・・・な」
「あいつらも、早々に村から出て行けばいいのに義理堅いというか・・・。」
少し難しい顔をして男は仕事に戻っていく。長閑ではあるが、皆落ち着きなく朝早くから仕事をし、森で狩りをし、食事を作りみんなで食べる。大きな家族のような集まり、暖かくて住み心地が良い。
しかし、何か言い知れぬ不安感がある。
若い衆があまりいないせいだろうか、特に女性はルナちゃんや女将さんの他は片手で数える位しか見当たらない。
「よーし、えらいぞ!今日はご馳走だ!!」
レグルスが帰ってきたようだ。どうやら獲物を捕らえた様で野兎を得意げにルプスの足元に落とした。
「うまいじゃないか!」「かぁー、いい鷲に育ったじゃないか」
豪快に頭を撫でると照れたように顔を緩ませる。
「絵の方はどうだい??」「宿屋に飾る絵の方は決まりましたよ。」
そう言って自分の仕事に入ることにした。
『いつか親元を離れなければいけない』
そう悲しそうにしていた人の為に、白い鷲を掲げ、誇らしげに笑う子供の顔を、それを見て微笑む星の様に輝く髪と瞳をした女性が寄り添う絵を・・・。