第4章 導きの星は誰を照らす
まだ、朝も遠い。少しだけ休もうと、枕元にある小瓶を掴む・・・水の様に透明で甘い香りのする薬。口をつけ飲み込んだ。
「ははさま?」「・・っけほ、起こしちゃった?」
器官に入ったのか声が掠れる・・・。
「もぅ、あさ・・・」「まだ夜よ・・コン・・もう少しだけ寝ましょうか。明日は画家さんと絵を描きに行くのよね?」
「ん・・村の風景・・・いっぱい教えるの・・・。」
まだ眠いのか、うつらうつらしている。優しく布団をかけ直してやり、寝台に入る・・・
「そう、楽しみにしているわ・・・。」「でも、本当はははさまといたい・・・もうお休み終わっちゃう」
明後日にはウィスタリアに送り出さなければいけない・・・。
「ははさま・・・」「ん?」「ははさまはお父様が好き?」「・・・・えぇ、」「どうして一緒にいないの?」
「・・・・。」「ぼくのせい??」「それは違うわ」
「・・・・・。」「ルプス、オオカミと女の子の話覚えている?」「うん!オオカミが人間になって女の子と一緒に暮らすお話、僕大好き」
「そのお話には続きがあるの・・・」
オオカミから人間になった男はやがて女の子と結婚し二人は仲良く暮らしていました。
ところが、一匹の狼が二人の前に現れたのです。狼はこう言いました。
『貴女の父上が倒れました。森は枯れ始め、国は荒れ始めています。次の王は貴方です。どうかお戻りください。』
オオカミの言葉を聞き、二人は森の狼たちの国へ向かいました。家来たちは新しい王を祝福しました。
人間に姿を変えた狼の王様は心優しく皆から好かれました。ですが、人間のお妃を持つことを家来は反対しました。
人間になったとはいえもともと狼だった王様。かたやただの人間で身分もない狼になれない女の子。
住む世界も住み慣れた場所も違う二人、やがて女の子は体を壊していきました。不憫に思った王様は彼女を外の世界に帰すことにしました。
王様と別れた女の子は泣きました。悲しくて寂しくて、涙をいつもポロポロと溢しました。
このまま泣き暮らそうと思っていた時、小さな命を宿している事に気づきました。