第4章 導きの星は誰を照らす
随分話し込んでいたらしいそろそろ休まないと。
この人も、そろそろ帰った方がいいだろう
「それに、いつまでも親元にいる訳にはいかないから」
とても静かな声が部屋に響いた。
「人間、いつ何時何が起きるかわからないんです。こんな体だからこそ特に思うんです。だから、できるだけ多くの事を学ばせたいし、知って欲しいんです。行きたい所に、やりたい様に、させたいんです。後悔がないように・・・。例え、私がいなくなっても一人で生きていける様に、強くて、誰かを守れる子であってほしいんです。」
「だからと言って、あんな幼い子供を・・・」
幼い子供だ、親元にいて甘えたい盛りだろうにしかし、それが許されない。
だからこそ、母御に近づく俺を毛嫌いしたのだろう。奪われてしまわないように。
「私なんかに構って、とらわれて、せっかく高く遠くに飛び立てる翼を無駄にさせたくない。失ってからでは遅い。
手折られれば二度と羽ばたくことはできないから」
「失って初めて大切だと思うこともあるでしょう。
でも、あの子は失って始めて出来た大切なものだから、その失うものが少なければいいと思う。」
酷く儚げで消え入りそうな姿はまるで月の様に、ほうき星の様に儚げだった・・・。
「・・・・あなたは何を失ったの?」「・・・すべてですよ」何も持っていないといった女の顔が久しぶりに会った懐かしい生徒と重なって見えた。
画家と随分話し込んでしまった。しかし、バレてはない筈だ、本当ならば話すべきではないのだ。しかし、懐かしい人につい理性が緩んでしまった。珍しくルプスが同性のことを褒めていたから・・・、
音をたてないように部屋に入る。健やかな寝息を立てる可愛い私の子。
失った。故郷も自身の名も愛する人も支えてくれる人も誰よりも愛しい人の腕も声も、・・・・全て。
『どうして、プリンセスは戻ってこないのかなぁ』
「失ってしまったからよ。傍にいる自信も、支える強さも・・・」
これから先、たとえ守ってもらえたとしても、何も出来ない私。出来なかった私にあの人にしてあげられる事なんて無い。そんな人間が、一国という重い責を果たすあの人の伴侶でいて良い筈がない。
否、もともと夢だったのだろう。何でもできる気がした・・・それこそ魔法の様にしかし、夢は覚めるし魔法も解ける。夢の余韻を残して。