第4章 導きの星は誰を照らす
目の前には、朝に見た少年がいた。朝と違い部屋の照明に照らされた眼は深い紫で宝石の様な輝きを秘めていた。不機嫌な顔と合い余って氷で出来た彫刻の様にも見える。 赤の他人でここまで似ているものだろうか?
「今朝はすまなかったね。大丈夫だったかい?」「ええ、ご心配をおかけした様で、ゆっくり療養していただければ大丈夫とのことでした。」
笑顔で受け答えをするあたりはちょっと違う。が、かなり引きつっていた。
「え、えっと。君はどうしてこの宿屋に?お手伝いかな?」「はい」「この宿屋の女将さんが今朝あった君のお母様なのかな?」
「はい。そうです」会話がうまく続かない、まるで毛を逆立てた猫の様に愛想がない。
「僕はロベール=ブランシェと言います。今朝は本当にすまなかったね。案内を断っておけば良かったね。この宿屋に飾る絵を頼まれたからいい風景を捜していたんだ。君のお母様のお蔭で良い場所を見つける事が出来たんだ。君から御礼を伝えておいてくれないか?」「・・・・。」
少年は少し戸惑った顔をした。
「絵が完成したら村からは出て行くよ。それまではこの壁に飾る絵を選定してくれないかな?」「ははさまにたのまなくていいの?」口調が年相応に戻っていた少しだけ警戒心を解いてくれたのだろうか?
「安静にしてないといけない人に頼むのも心苦しいから君さえ良ければ」少し思案顔をしてから口を開きかけていた少年。「おーい、ルプスー!こっち手伝ってくれー風呂釜の調子悪くて動きゃしない。」
が、思わぬ来客に会話が遮られてしまう。男勝りで勝ち気、少しだけ艶めいて聞こえる声に何処か聞き覚えがありそちらを見る。
一度見たら忘れられないだろう見事な金髪の女性が立っていた。
ふと、王都で声をかけてきた御仁を思い出す。成る程、確かに賞賛するだけの美人である。いや、そうじゃなくて、
「も、もしかして、君」「あれ、ロベール先生?何でここに今画家の人が泊まってるって」「その画家の人がこの人です。ルナ母様の知り合い?というか、風呂釜の調子悪くしてるの母様でしょ?機械弄れないんだから使わないで」
「やっぱりルナちゃんか!?」
まさか、旅先で こんな懐かしい生徒に会えるなんて!!